作家・室井佑月氏は、持続化給付金の詐欺事件に関与した専門職に苦言を呈する。
* * *
6月3日の「朝日新聞」に「税務署員ら 関与続々 コロナ 持続化給付金詐取容疑」という記事があった。
新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金をめぐって、詐欺が相次いでいる。
「警察庁によると、全国の警察が4月までに摘発した持続化給付金の詐欺事件は3214件で、その総額は約31億8400万円だった。中小企業庁によると約1万5千件、約166億円が自主返還されている。こうした不正受給の中には、国税職員や税理士らが関わったものも少なくない」
お金を返し詐欺罪に問われなかったのも、1万5千件もある。
なぜ、給付金詐欺がこんなにも起こっているのか? 給付申請の手続きを簡素化したからだ、といわれている。けど、あたしの知り合いの飲食店の店主は、申し込み日が1日遅れただけで給付金をもらえなかった。お婆(ばあ)さんで、この制度の内容や手続きの仕方がすぐに理解できず、方々に聞いてまわっていたからだ。
今回、申請手続きを簡単にするため選ばれたのが「確定申告書の控え」。しかし、この控えは実態がない申告内容でも手に入れることができたようだ。
「例えば、副業をしていることにして19年分の事業収入が100万円あり、同程度かそれ以上の経費もかかったと記載して税務署に提出する。提出時点で税務署側のチェックを受けることもなく、『もうけ』がないため課税されることもない。手元には、19年に100万円分の事業をしていたことを『証明』できる控えが残ることになる」
「(こういった詐欺の方法は)警視庁幹部は『事業経験の乏しい若者にとっては容易ではない』と語るが、専門知識を持つ国税職員や税理士であれば思いつくことが可能だったとみられる」
詐欺を行った元国税職員や証券会社の元社員らの中に、仮想通貨の投資グループのメンバーもいたらしい。大学生ら約200人の名義で総額約2億円の給付金を不正に受給し、その大半を投資にあてていたという。