先日、韓国の作家であり、2021年のソウル市長補欠選挙に出馬したキム・ジナさんを招いたトークイベントを行った。韓国も日本と同様の少子高齢化社会で、女性差別の激しい国でもある。20代女性の声など「ない」にも等しく、候補者がアピールする先はたいてい「中高年男性」に向けたものである。そういうところは日本と変わらない。それでも今、韓国では20代女性の投票行動が大きな力を持ちはじめているという。
先の大統領選挙で、「女性家族省」を廃止すると公約していたユン・ソンニョ氏は論外だが、性暴力問題に取り組もうとしないイ・ジェミョン氏には投票できない……という若い女性たちの絶望の声は多く聞かれた。結果的に1ポイントにも満たない差でイ・ジェミョン氏は負けたのだが、それはギリギリまで投票先を決定しなかった20代女性の浮動票の力を見せつけることになった。しかも大統領選挙後、たった2日で1万人以上が敗北した与党「共に民主党」に入党し、しかもその8割は女性だったのだ。そのことを受け、イ・ジェミョン氏は「共に民主党」の非常対策委員会の共同委員長に26歳の女性、パク・チヒョン氏を大抜擢した。パク・チヒョン氏は、韓国社会を震撼させたデジタル性暴力「n番部屋」を追及したフェミニスト・アクティビストだ。
ああ、これぞ民主主義。韓国も日本と同様にシルバー民主主義の国。それでも諦めずに声を上げてきた運動が、少しずつ社会を変えている。20代の女性の票はバカにできない、と政治家が理解せざるを得ないほど、20代女性たちが動いたのだ。動けば、変えられるのだ。
……とはいえ今回の参議院選挙、生まれて初めて棄権しようか……と思うほど、やる気が出ない。入れたい党も入れたい人もあまりにいない。それでも諦めたら負け……と韓国のフェミニストに教えられる。女性候補者の胸をフツーに触るようなオジサン候補者や、そんな候補者を問題にしない政党などに、のさばらせちゃいけないよね、とも思う。若者と高齢者の格差はある、女と男の格差もある。その格差を埋めるために「余命投票制度」だ「ポイント制度」だとか言っている前に、もっとできることはあるはずだ。他者の人権をもぎとらなくたって。