写真はイメージです(Getty Images)
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、選挙権について。

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 朝、父からショートメッセージが入った。健康のために毎日欠かさない散歩をしていたら、前から歩いてきた男に、いきなりこんなふうに怒鳴られたというのだ。

「あんたたち団塊の世代は、人も車も左側通行だって知らないのか!」

 想像するに、互いに相手に道をゆずらない“男らしい”圧のかけあい(よく街で見かけますよね)をしていた可能性もあるが……父は焦った様子で私に、こう送ってきた。

「人が右側通行は常識ではなくなったの? 不安になったので確認したい」

 ……そこ?!どうでもよくない?右でも左でも!?と思いつつ、「まだ右なのでは」と一言返しておいた(法的な決まりはない)。

 それにしても、この国で年を取るのは恐ろしいことだなと思う。人類史上、どの国も経験したことのない「少子高齢化」はとどまる気配がない。日本が最も裕福だった時代を生き、十分な貯蓄があるとされる高齢者に対して、底の抜けた経済のしわよせにあえぐ若い世代のいら立ちは想像を絶するものがある。道の右側を歩いていただけで、「あんたたち団塊の世代は!」と怒鳴られる年寄りは、もしかしたら日本全国にいるのかもしれない。

 時事YouTuberのたかまつななさんが橋下徹氏のネット番組で提案した「余命投票制度」が、話題になっている。寿命を100歳に設定し、「100-年齢」で投票権の重みを変えるポイント制度だという。20歳だったら80ポイント、60歳だったら40ポイントというふうに、年々ポイントは下がっていくという。高齢者の政治的影響力が強く、世代間の格差が強い少子高齢化の政治状況=「シルバー民主主義」を打破するための投票制度ということだ。番組を見たが、若者の政治的影響力を増さなければ日本は変われない! ということをたかまつさんは明るく熱心に語り、橋下氏も全面的に賛同していた。

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「諦めたら負け」だから投票に行く