原油など高騰する資源価格については、急速な下落を見込みにくく、上野さんは「高止まりがコンセンサス」という。このため、貿易赤字が改善すると見込みにくく、「投機筋は安心して円を売ることができる」(上野さん)。

 上野さんも、夏場までに140円くらいまで円安が進み、秋以降に緩やかな円高ドル安になる可能性があるという。円安の進行が止まるのは、ドル高の圧力が止まるとき。すなわち、米国の利上げで景気減速の懸念が強まり、利下げを意識してくる段階とみている。一方、150円まで円安が進行するのは、米国金利の利上げがさらに進む場合だが、米国経済が耐えられるのかという問題もある。上野さんは「150円はなかなか行かないのではないか」という。

 米国では11月に中間選挙がある。インフレの逆風が吹き、バイデン政権の民主党は苦戦するとの見方が根強い。市川さんは「どういう結果になってもインフレ抑制策が続き、為替市場への影響は限定的」と、市場に影響するような政策変更はないとみている。一方、上野さんは「バイデン政権がレームダック(弱体)化し、米国経済の先行き懸念が出てくる」との可能性を指摘する。

 いずれにしても、当面は円安が続くとみられる。個人投資家はどう対応すればいいのか。吉田さんは「素直に外貨投資するのがいい」と話す。ドルやユーロを買うか、ドル預金もいいという。市川さんも「ドル預金はやりやすい」と話す。市川さんは一般論として、ドル預金を持っていれば一定の金利がつくほか、円安が進めば為替差益も狙えるかもしれないという。

 市川さんによれば、いまの株式市場では、景気悪化の影響などを受けにくい内需を中心とした“ディフェンシブ株”が注目されているという。具体的には食品や鉄道、電力・ガスなどだ。市川さんは「リスクを抑えた投資という声が多い」という。

 当面は円安が続きそうで、輸入物価上昇などインフレ圧力はおさまりそうもない。(本誌・浅井秀樹)

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