地球上から根絶された天然痘。それと似た症状の出る「サル痘ウイルス」の感染者が、春以降、世界各地で発生している。AERA2022年7月4日号の記事を紹介する。
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世界保健機関(WHO)は6月23日、「サル痘」について専門家による緊急委員会を開いた。委員会は、現在のサル痘の広がり方は異常で、これ以上広がらないように緊急に世界各国が取り組む必要性を強調したが、現時点では感染者が比較的限られることや、重症化する人がほとんどいないことから、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言するにはまだ至らないという結論を出した。WHOのテドロス事務局長は、委員会の提言を踏まえ、緊急事態宣言を出すのを見送った。
サル痘ウイルスは、天然痘(痘そう)ウイルスの仲間だ。ヒトへの感染が確認されたのは1970年、アフリカ中央部の現コンゴ民主共和国が最初だった。以来、コンゴや、アフリカ西部のナイジェリアなどで感染が報告されてきた。
■発疹1個だけの場合も
アフリカ以外ではほとんど感染者はいなかったが、今年5月、英国でアフリカへの渡航歴のない感染者が見つかって以降、スペインやドイツなどヨーロッパ諸国や米国、カナダなどから感染者の報告が相次いでいる。
WHOによると、今年1月以来、アフリカを含めた50カ国で3千人以上の感染が確認された。米疾病対策センター(CDC)によると、23日現在、もともと感染者のいたアフリカ諸国以外の感染者が3504人に達した。日本は24日現在、感染者の報告はない。
感染から症状が出るまでの潜伏期間は5~21日。典型的な場合、まず発熱や頭痛、リンパ節の腫れが起き、その後、発疹が出る。発疹は顔や手足にできることが多い。アフリカの流行では致死率3~6%程度とされていたが、今年の世界各地の流行では15日現在、亡くなったのはナイジェリアの1人だけだ。
WHOによると、今回の流行ではサル痘の典型的な症状を示さない感染者が多いという。発疹の数が数個、人によっては1個だけと少なかったり、発熱などの症状が発疹の後に出たりしている。