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 築40年を超えるマンションが増える中、住人の高齢化も進んでいる。認知症の居住者が、オートロックが開けられずにエントランスに長時間座り込んだり、自分の部屋を忘れ他の部屋の呼び鈴を片っ端から鳴らしたりと、高齢化によるトラブルが起きているのだ。

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 管理組合の目によって、認知症高齢者の迷惑行為の“現場”を特定され、住みづらくなってしまったケースもある。某マンションでは、敷地内の植栽部分に排泄物が残されていることが続いた。管理組合は、外部からの侵入者が排泄行為をしているのではと疑い、防犯カメラを増設して撮影することにした。理事会を開催し、理事らの前で防犯カメラ映像を再生。すると認知症が疑われる居住者が排泄行為をするところが映されていたのだ。理事会は、本人の家族に連絡し、事態を説明。本人はマンションから退去したが、後味の悪さが残ってしまった。

 大手マンション管理会社、大和ライフネクストで調査を行うマンションみらい価値研究所所長の久保依子さんは言う。

「事前に認知症の居住者がいることがわかっていれば、防犯カメラで撮影する以外の方法があったかもしれません。認知症であることを隠されると、解決の糸口が見つけにくくなったり、他のトラブルに発展してしまうこともあります」

 マンションの中で、住人と最も接点が多いのは管理人だ。相当の大規模マンションでない限り、基本的に各マンションにつき、管理人は一人。それゆえに、認知症が疑われる居住者への対応を含め、現場でとっさの判断に困ることも少なくないという。

■管理人も悩む認知症への対応

 大和ライフネクストが管理人を対象に行った調査によれば、3割近くが認知症と思われる居住者に「対応したことがある」と回答。80年以前に完成した高経年マンションでは、「対応経験あり」が約半数に達した。調査では、現場で戸惑う管理人らの声も明らかに。認知症と思われる居住者に最も多いのは「同じ話を何度も繰り返す」。管理人の中には途中で話を打ち切ることができず、勤務時間を超過してしまうという声もあった。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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