貧しさ故に働かざるをえない子どもたち。紛争やコロナ禍が、苦境に拍車をかける。解決への道のりは遠い。AERA 2021年9月6日号から。
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国際労働機関(ILO)と国連児童基金(UNICEF)は6月10日、児童労働に関する世界推計の報告書を共同発表した。それによると、2020年の世界の児童労働者数は1億6千万人。これは世界の子どもたちの約10人に1人に相当する。
注目すべきは16年の推計と比較して840万人も増えたことだ。調査は4年ごとに実施し、00年以降は減少傾向にあったが、初めて増加に転じた。
報告書をみると、サハラ以南のアフリカでの増加が全体を押し上げていることがわかる。この地域は近年、貧困の削減に向かっている。その一方で、急速な人口増加により、人口の40%以上が依然として極度の貧困状態にある。08年から20年にかけて、子どもの人口は1億480万人増加。並行して児童労働数も2150万人増加した。また世界の難民の39%が生活しており、紛争の影響も児童労働の一因といえる。
■最低賃金の半分で働く
一方でアジア・太平洋とラテンアメリカ・カリブでは、児童労働は減少傾向にある。
バングラデシュ政府の取り組みを見ると、学校の改修、衛生設備や井戸を設置し、労働検査員を増員して児童労働や夜間労働の監視を実施した。ユニセフと協働で児童労働に従事する3万5千人以上に給付金を提供。およそ15万人に児童労働、児童虐待などの意識向上を図った。19年に私が取材した造船工場のオーナーは「うちには子どもはいないよ。児童労働させたら罰金だからね」と言っていた。
一方、バングラデシュは「非正規」の企業が経済を支えているといっても過言ではない。出稼ぎにきた子どもたちの受け皿になっており、劣悪な環境で大人に交じって働いている。
船の照明器具工場で働くファヒン君(14)もその一人。地方出身の彼は家が貧しく、10歳で首都ダッカにやってきて、この工場で働き始めた。月収は4千タカ(約5千円)。最低賃金の8千タカと比較しても、かなり安い。