とうかいりん・だい/1999年、山形市生まれ。三菱商事所属。自閉症スペクトラム。4歳の時、現在も通う「山形ドルフィンクラブ」で兄とともに水泳を始める。中学校では水泳部にも入部。全国大会には出場できなかったが、健常者の中で力をつけた。高等養護学校在学時の2014年からパラ水泳に参戦。体格の向上とともに記録を伸ばしオールラウンダーに。200メートル自由形の日本記録も持つ(写真/伊ケ崎忍)
とうかいりん・だい/1999年、山形市生まれ。三菱商事所属。自閉症スペクトラム。4歳の時、現在も通う「山形ドルフィンクラブ」で兄とともに水泳を始める。中学校では水泳部にも入部。全国大会には出場できなかったが、健常者の中で力をつけた。高等養護学校在学時の2014年からパラ水泳に参戦。体格の向上とともに記録を伸ばしオールラウンダーに。200メートル自由形の日本記録も持つ(写真/伊ケ崎忍)
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 東京パラリンピックは8月31日、水泳の男子200メートル個人メドレー(SM14)があり、東海林大(22)が出場する。AERA2020年1月13日号のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。

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「自分を肯定する力」で王者になる。

 知的障害の部のエース東海林大は2018年、100メートルバタフライで世界記録を樹立。19年9月のパラ水泳世界選手権は男子200メートル個人メドレーを世界新で優勝し、東京の出場権を獲得した。「リオ選考レースでは緊張して力を出し切れなかった。その悔しさがあったからここまでこられた」と振り返る。

 出来不出来のムラが大きかった弱点が改善された。佐々木賢二コーチからも「以前はちょっとしたことが不安になったりしたが、少しずつ跳ね返せるようになった」と心の成長をほめられる。

 18年から父親の勧めで「できたことノート」をつけ始めた。「おじいちゃんに親切にした」「練習を一生懸命できた」。日常の些細なことを書き連ねることで、自己肯定感をアップさせた。ページの積み重ねが自信に、そして記録更新につながった。

「それと、トレーナーさんに『楽しんで!』と言われたのがヒントになった」(東海林)

 自分との合言葉を「明るく、笑顔で、楽しんで」にした。

 水の抵抗を最低限に削った泳ぎの美しさにはもともと定評がある。佐々木コーチは「周囲から学ぶ素直な吸収力が、彼の強み。手はこうで、足はこうで、とアドバイスすると、自分が納得できるまで練習し続ける」と話す。

「自分にしかない個性で、ありのままの自分で、ありのままの個性を発揮したい」と東海林。障害は個性。そう捉え、記録や結果云々よりも素の自分と向き合う。それもまた、20歳の強みに違いない。

(ライター・島沢優子)
 
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■パラ水泳

 パラリンピックの水泳は競泳のみ。オリンピック同様、自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、個人メドレー、メドレーリレー、フリーリレーの7種目で競う。脊髄損傷など身体の機能に関する障害や、視覚、聴覚、知的などの障害の種類や程度によってクラス分け。出場は、世界選手権2位以内や、世界パラ水泳連盟の定める標準記録の突破などが条件。

※AERA2020年1月13日号に掲載