カブールは通信事情も悪くなり、インターネットが繋がらないことも多々ある。そんな中、22日にもファリッドと電話で話をすることができた。「何カ所かで小競り合いも始まっているし、以前は痛手を負ったアフガニスタンだったが、今は、死体になったアフガニスタン、という感じだ。タリバンは変わったとニュースなんかでは言うが、みんな20年前を忘れていない。今にいたる間も、タリバンがどんなことをしてきたか考えてほしい。空路がだめなら、陸路でなんとか出られる道を考える。周りもみんなそう言っている」
会見を開いたタリバンは融和姿勢を強調したが、タリバンが約束を必ずしも守るわけではないことは、歴史が証明している。「口約束では、いや、公式発表だとしても実行に移されるかどうかはわからないし、仮にそうなったとしても一夜にして覆させることだってある」と筆者の友人も不安を隠せない。
日本でも「国外脱出を図る西側の人たちで空港はカオス状態」「ベトナム戦争後のサイゴン陥落をほうふつさせる」と悲壮感を伴って報道されている。だが着の身着のままでの脱出とはいえ、彼らはまだ「強者」かもしれない。「本当の弱者」は先の見えない状況の中、タリバンの占拠するカブールに「取り残された」大多数のアフガニスタン人たちだ。
(元アフガニスタン在住ライター・海外書き人クラブ会員/瀧川貴世)
※AERAオンライン限定記事