チャド・レクロー選手(29・南アフリカ)。無観客となった東京オリンピックでは、家族とZoomやFaceTimeを使ってコミュニケーションをとったという(撮影/小黒冴夏)
チャド・レクロー選手(29・南アフリカ)。無観客となった東京オリンピックでは、家族とZoomやFaceTimeを使ってコミュニケーションをとったという(撮影/小黒冴夏)
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 17日間にわたる東京オリンピックが幕を閉じる。五輪選手が次々と新記録を樹立するのと同じように、それを支える技術も進化している。競泳のチャド・レクロー選手(29・南アフリカ)に今回の五輪や自身の泳ぎをサポートする技術について、インタビューした。

【写真】微笑むチャド・レクロー選手

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「競泳選手にとって、タイムはすべてです。キャリアを重ねるごとに100分の1秒の重みを強く感じるようにもなりました」

 そう振り返るのは、東京オリンピックの男子200メートルバタフライに出場した競泳のチャド・レクロー選手だ。今大会では5位だったが、2012年のロンドン・オリンピックでは金メダル、16年のリオデジャネイロ・オリンピックでは銀メダルを獲得。3大会連続での五輪出場を果たしている。

 なかでも、ロンドン・オリンピックなどで“水の怪物”として知られ、同種目3連覇が期待された競泳のマイケル・フェルプス選手(アメリカ)をチャド選手が制したときには、そのタイム差がわずか0.05秒だったことも話題になった。チャド選手は言う。

「振り返ると、とても僅差のゲームでした。もし、今の技術が50年前のままだったら、メダルの色は違ったかもしれません」

 選手自身の想像を絶する努力はもちろんだが、その裏側には記録を支える技術進化があるという。チャド選手は自身がアンバサダーを務めるオメガの技術を例に挙げて、こう話す。

「プールに飛び込む前に立つスターティングブロックから、ゴールしたときに手をつくタッチパッドまで、アスリートのために様々な技術が導入されてきました。何より選手がメダルを取れるのは、タイムあってこそ。50年前は、100分の1秒はとても計りづらいものでした」

スターティングブロックはフライングの検知も可能だ(オメガ提供)
スターティングブロックはフライングの検知も可能だ(オメガ提供)

 近代オリンピックがはじまった1986年は、タイム測定にストップウォッチが用いられていたという。1932年のロサンゼルス・オリンピックからは、当時の最先端である10分の1秒単位の精度で計測できるストップウォッチを開発していたオメガがオフィシャルタイムキーパーに。それ以来、選手がより良い結果を出せるように技術をアップデートしてきた。

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