空手や陸上など、まだメダルが確定していないが、高額の報奨金を用意する統括団体もある。全日本空手道連盟は金メダル1千万円、銀メダル500万円、銅メダル300万円だ。日本陸上競技連盟は金メダルに2千万円、銀メダルで1千万円、銅メダルで800万円となっている。陸連の担当者はこう言う。
「五輪でメダルを獲得すること、特に金メダルの価値は非常に高い。報奨金もメダルの重みに見合った金額にしていこうという意見が出され、12年のロンドン五輪まで1千万円だった1位の選手の報奨金を16年のリオ五輪から2千万円とし、2位以下もそれに伴って引き上げた。メダル獲得に至る選手やコーチの努力や果たした成果に応えようと検討した末に、この金額を定めました」
■1億円の企業報奨金も
今回のランキングでは調査対象にしなかったが、競技によっては「企業」が報奨金を出すケースもある。
男子卓球のウェアを提供しているVICTAS(東京都)は、男子団体が金メダルを獲得した場合、1億円の報奨金を支給するという。団体メンバーには3人がエントリーされていて、1億円を等分する形だ。
1億円も払って大丈夫なのか――余計なお世話ではあるが同社に尋ねてみると、「会社的に……大丈夫です」(社長秘書)と笑いながら答えた。
金メダルが期待される野球日本代表・侍ジャパンの事業会社、NPBエンタープライズ(東京都)は、メダルを獲った場合、JOCと同程度の報奨金を出すと発表している。選手24人に加えて、6人の監督・コーチも対象になる。金メダルを獲れば、報奨金の総額は1.5億円にものぼる。この金額には他の協会からも取材中に「羨ましい」という声が漏れていた。
報奨金はそれぞれの団体の懐事情に大きく依存しているといえそうだ。努力の末、勝ち取ったメダルに対して多くの報奨金を出してほしいところだが、先の生島さんは「今後、厳しい時代がくるだろう」と見る。どういうことか。
「これまで各競技の統括団体は企業に頼った運営をしてきたのが多いです。しかし、コロナの影響もあり、今後企業からの資金は細くなっていく可能性が高い。これからは一般の人々のほうを向きながら、いかに業界全体を盛り上げるか、いかに支援者を集めるかということがより大事になってくると思います。選手も競技だけではなく、営業的なセンスが問われるようになるでしょうね」(生島さん)
メダル獲得をいかに業界全体の盛り上がりつなげられるか。次の大会の報奨金にも影響してきそうだ。
(文/AERA dot.編集部・吉崎洋夫、大谷奈央)