■幾多の危機を乗り越え
東京・新宿に日本一の高さを誇る京王プラザホテルが開業したのは71年6月。先行オープンした47階の展望室には初日に1万人もの人が訪れた。3年後、高さは隣接する新宿住友ビルに抜かれる。だが、「ホテルで初の常設チャペル設置」(75年)、「レディースプランを都内のホテルで初めて販売」(93年)、「ホテルで初めて超高速インターネットの無料サービス」(01年)など、「初」のつく企画を絶えず打ち出しては、ホテルの常識を塗り替え、楽しみを広げてきた。
競争の激しいホテル業界で、同ホテルが50年間、独自のポジションを保ってきたのは、創業時からソフト面に重きを置いた「プラザ思想」がベースにあったからだ。企画広報支配人の杉浦陽子さんは言う。
「プラザとはスペイン語で『広場』の意味です。宿泊施設という概念にとらわれず、さまざまなお客様が行き交い、集い、思い思いの時間を自由に過ごしていただく広場を創造する。都市の中で広場としての社会的な役割を果たしていく。そうした創業時からの考えを大事に受け継いできました」
ロングセラーの強さは、危機に対する強さでもある。リーマン・ショックや東日本大震災も乗り越えてきた。コロナ禍でも「ハイブリッド型宴会コンシェルジュの設置」「ホテルスタッフがデリバリーする和食箱御膳」などニーズをこまやかにくみ取ったサービスを展開している。
50周年にあたっては、同じく今年50周年を迎えるカップヌードルとコラボ。シェフたちが本格アレンジした料理を出すユニークな企画で話題を呼んでいる。杉浦さんは語る。
「これからも開業の精神である『進取の気風』のもと、新風を送り続けていきたいです」
■50年前と今は似ている
前出の北村さんは、71年と現在の2021年には共通点が多いという。
「71年はカラーテレビが新しいメディアとして台頭。企業と消費者の関係が企業主導から消費者主導へ転換する兆しと、人々が新たなライフスタイルへ向かおうとする萌芽(ほうが)が見られる。一方、50年後の現在も、SNSなどの新しいメディアが台頭。消費者と企業の関係は共感が重要になり、暮らしはコロナによって『新しい生活様式』へ移行しつつある。時代の転換期にある点で同じで、71年を探ることは私たちの未来を占うことになり興味深いです」
(編集部・石田かおる)
※AERA 2021年7月19日号