作家・室井佑月氏は、性風俗業へのコロナ給付金不支給を「合憲」とする判決に苦言を呈する。
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世の中が窮屈になっていく。参院選では、右寄りな候補者が増えた。たぶん、それが世間でウケるという風潮もあるだろう。
人の気持ちは、生きるのが苦しく未来が不安であればあるほど、安易な全体主義に賛同してしまうのかもしれない。今、周りと融合せず、自分だけが仲間外れにされたら、こっから先はもっと苦しく生きていけないかもしれないと感じてしまうのだろうか。
ほんとうはこういうときこそ、人は連帯し、塊となって、権力者へ不満や文句をいう場面なんだが。
権力者が楽で動かしやすいから、全体主義に向かっているに過ぎない。それは我々の個の意向が、蔑(ないがし)ろにされるということだ。
6月30日付のNHK NEWS WEBに「性風俗業へのコロナ給付金不支給は“合憲”東京地裁」というニュースがあった。「新型コロナの経済対策として行われた国の給付金制度で、性風俗業が対象外とされたことについて関西地方の事業者が『職業差別であり、法の下の平等を定めた憲法に違反する』と国などを訴えていた裁判で、東京地方裁判所は『異なる取り扱いをすることには合理的な根拠がある』として、憲法には違反しないと判断し、訴えを退ける判決を言い渡しました」
という。裁判長は、こんなことをいった。
「限られた財源で行われる公的な給付金の制度設計は行政の裁量に委ねられている。客から対価を得て性的好奇心を満たすようなサービスを提供するという性風俗業の特徴は、大多数の国民の道徳意識に反するもので、異なる取り扱いをすることには合理的な根拠がある」
原告側の亀石倫子弁護士は、記事の中でこう述べていた。
「裁判所が国による職業差別にお墨付きを与え『性風俗を差別していい』というメッセージを社会に発信した。司法が少数者の権利を守らずむしろ権力と一体化している。到底容認できない」