本のグラフィックデザイナーである著者が、表現の道を切り拓いた16人の偉人たちを紹介した一冊だ。
まず文庫ポケット本の開発をし、本の基本構造を定着させたアルド・マヌーツィオ(1450?~1515)が登場する。彼はイタリア、ヴェネツィアの出版社兼印刷工房の主宰者でもあり、本の革命児だった。ポケット本開発以外にも、本にデザイン要素を入れる、ページ番号(ノンブル)を導入するなどにより、それまで聖職者や王侯貴族に独占されていた本は、一般市民に開放されるようになる。
彼の功績だけでも驚くが、その他にもトリミングの達人である俵屋宗達や、円グラフを使用し多くの命を救ったナイチンゲールなどが登場する。
今では当たり前のように本を読めるが、それも彼らの手法や着想のヒントなど、試行錯誤のおかげだろう。(新井文月)
※週刊朝日 2021年2月12日号