逆にオンライン産業は業績を伸ばし、株式市場は活況を呈しています。もうけた人が打撃を受けた人を助けられるような、社会全体で再分配を促進する仕組みを構築することが早急に必要です。新型コロナウイルス感染症を善悪二元論で捉えれば差別やナショナリズムに帰着します。逆に社会共通の困難として捉えれば連帯が促されます。
パンデミックや地球温暖化には国を超えた科学的対策が必要です。しかし一部の宗教指導者や政治的指導者は専門家の助言に俊敏に応じないことが露呈しました。人文学には、科学と社会の対立を解きほぐす役割が期待されていると自覚しています。
*堀江 宗正(ほりえ のりちか)教授(東京大学大学院人文社会系研究科)
2008年東大大学院人文社会系研究科で博士(文学)取得。同研究科准教授を経て20年より現職。
■オンラインコミュニケーションの改善を
川上憲人教授(東京大学大学院医学系研究科)
年が明けて鎮静化が期待される新型コロナウイルス感染症ですが、2021年もその影響が続く可能性は高いです。また、感染終息後もさまざまな場面でオンライン形式が残るでしょう。
昨年は新型コロナウイルス感染症が、感染への不安や経済的不安など、さまざまな不安を人々にもたらしました。対面で人と関わる機会が減少したことによるストレスで、心が晴れない生活を送った人も多いでしょう。学生の中では、人間関係が構築されていなかった新入生が、特に影響を受けたと思います。
私の専門である精神保健学では、どのように人々の心の健康を保つかを考えます。心の健康には、人とのコミュニケーションが重要です。オンラインでは、身振り手振りや声色といったノンバーバル(非言語)の情報がうまく伝わりません。そのため、コミュニケーションの質は半分程度に落ちてしまいます。また、集団への所属意識は「自分が何者か」を確認し、安心を得るために大切です。しかし、対面での交流が制限される状況ではなかなか形成されにくいでしょう。