魅了される写りこそレンズに求める個性
妥協がないのは「筐体」だけではない。シグマの高度な光学性能を十分に感じる写りは健在。f値を明るくすることを目的としないことで、より実用性能あるf値での描写力はむしろ高いのでは……と感じるほどだ。もちろん、それぞれのレンズは開放値から使用しても全域でシャープ。背景コントロールのために絞り込むという意識で使うレンズだろう。そうでありながらも、開放値で使うとまるでオールドレンズのようなフレアやゴーストが発生。創作意欲を掻き立ててくれる。
とくにポートレートにおいては、フレアやゴーストを「あえて」積極的に取り込んで、抽象的な印象を与えたりすることがある。撮影時に何かを伝えたいと強く思えば思うほど、このレンズ群は「お前の好きにすればいい」と語りかけてくれる。癖があるほど使い込む楽しさや達成感が生まれ、写真を撮ることが数倍楽しくなる。まさに優れた部分が特出していて面白い。
作例のようなポートレート撮影時に気になるボケ味だが、これにも正直驚いた。開放値において周辺部分でもボケが「レモン型」になることはなく、きれいな円形を描く。積極的にマルボケを入れたくなるほどだ。それでいてシャキッとした中にも、どこか緩やかな描写をする。Panasonic LUMIX S5に新搭載されたフォトスタイル「L.クラシックネオ」との相性も非常に良かった。この組み合わせで使うことで、どことなく「昔ながらの写真表現」を感じて懐かしい。筆者が学生時代にフィルムカメラで、がむしゃらに撮影していた時の感覚が蘇る。
また色乗りもよく、嫌みのない自然な表現をしてくれるレンズで、どんなレベルの層のユーザーが使っても満足できるものだ。筐体に絞りリングが付いているのも非常に使いやすい。「カチカチ」とした感触で回せるリングは、スチル撮影時において写欲を高めてくれる。数値を変えることで、少しずつ変わっていく描写に思わず「にやり」としてしまう。
そして、SIGMA 65mm F2 DG DN |Contemporaryに関しては、ポートレート撮影には不向きかなと使用前は感じていた。筆者が標準と言われる50ミリをよく使用しているので、少し長いのではないかと感じていたからだ。ところが、実際に使用してみるとこれがなんとも心地のいい焦点距離で小気味よく使うことができた。85ミリよりも親近感の出る距離感がいい。50ミリでの撮影ほど被写体に寄ることがないため、この「ご時世」にもマッチングのいいレンズだと感じた。
シグマの「I」シリーズは撮影することの楽しみとは……??ということを、再認識するために生まれてきたのではと思うレンズ。効率的でそつのない「マルチ」に使えるレンズばかりを求めていた我々にとっては、とてもセンセーショナルなレンズであることは間違いない。価格もかなりリーズナブルだし、一気に3本揃えることができそうな値段。このレンズ群を購入して、ぜひ「にやり」としながらシャッターを切ってほしい。
撮影・文/大貝篤史 モデル/COCORO
SIGMA 24mm F3.5 DG DN |Contemporary
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/cas/product/contemporary/c021_24_35/
※2021年1月22日発売予定
SIGMA 35mm F2 DG DN |Contemporary
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/cas/product/contemporary/c020_35_2/
SIGMA 65mm F2 DG DN |Contemporary
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/cas/product/contemporary/c020_65_2/