■女性であるために受けてきた不当な扱いに対する反発
マキエさんはそうした相手はリプライで晒し者にしつつ、即ブロック。そして、性的対象として見られることを逆手に取って、開き直って“昭和B級エロ”の世界観づくりに邁進した。そうするうちに、“クソリプ”は減っていった。一方で女性からの反応は男性とは対照的に、共感の声が多く集まったという。
「女性はどこかで老いに対する恐怖を持っていると思うのですが、それが解消されたという反応がすごく多かったです。2年くらい前に私が撮影した20代のモデルの方にも、『年齢が上がるにつれてどんどん自分の価値が減り、自己肯定感もどんどん削られていくんです。その削られた部分をマキエさんが埋めてくれた』って言われました。私も若い頃に同じような恐怖感がありましたからよく分かりました」
女性であるがゆえの葛藤は、カメラマンという職業選択においても、否応なく突きつけられたという。
「女性が少ないカメラマンという仕事を選んだのは、自分が女性であるために受けてきた不当な扱いに対する反発という感覚がすごくありました。でも、女性性を意識せずにできる仕事を選んだつもりが、クライアントから肉体関係を迫られたり、宴会への出席を求められたりしたこともありました。また、男性と同じ仕事をしていても仕事が増えないという現実があり、本来はカメラマンの仕事ではないのにスタイリングや、メイクがつかないモデル撮影の時にメイクをするなど、女性ならではの気遣いで仕事を取ってきたところもあります。モヤモヤはありましたけど、そこはもう割り切るしかなかったです」
こうした葛藤は、40代を過ぎて以降、どんどん楽になっていった。
「周囲が女として見なくなってきたことで、やりやすくなったというのがあります。また、私自身も閉経したことで生き物として女でなくなったと思うようになったから、開き直って熟女自撮りヌードができたんだと思います」
また、普段の自分では選ばないような服や下着を身に着けることが、“コスプレ”のような切り替えをもたらしてくれた。
「私の作品を見たトランスジェンダーの方に、『マキエさんの作品、これって女装なんだよね』って言われた時に、自分でもすごく腑に落ちたんです。カメラマンの仕事をしている時は黒っぽい服やパンツ姿が当たり前で、ことさら女性っぽい服装を避けきたので、今になって思い切ってやっているというのは確かに女装だなと」