
世の中がハッピーに見えていなかったのかもしれない
新旧の写真集のページをめくり、見比べてみる。すると、明らかな違いを感じる。人のとらえ方、画面への入れ方が違う。何よりも前回は楽し気な感じがにじみ出ている。
「確かに、前の写真集の方がちょっとポップで、華やいだ感じがありますね。時代がそうさせたのかもしれない。世の中が前よりもハッピーに見えなくなかったのかもしれない」と、本山さんは考え込むようにして言う。
――そんな気持ちが作品に写り込んだ、ということでしょうか?
「そうかもしれません」
会場にはマスク姿の女性を写した作品も展示される。昨年6月に東京・浅草で撮影したものという。
「今回のコロナで、もう、しばらくはマスクなしの人は撮れないんじゃないかな、と思っちゃいますね。声をかけて撮っていないから、『マスクをとってください』とも言えないですし。写真としてはディテールのことかもしれないですけど……」
人々の姿だけでなく、地方の街の姿も変わったという。
「特に駅まわりはすごく変わりましたね。古いものを撮ろうと思ったら、かなりねらいをつけて行かないと残っていない。レンガ調の変なモニュメントがあったり。どこも同じような雰囲気とかカタチになっているな、という印象があります」
ふと気がつくと、地方で写した作品の中に、東京の風景が点在している。違和感はない。
「同じような撮り方ですけど、実は、東京も撮っています」
変貌を遂げる都市、東京。それを愛着のある故郷、八代を撮るのと同じような視線でとらえている。
マイペースを貫いてほしい。
(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】
本山周平写真展「日本 2010-2020」
ギャラリー蒼穹舎 1月9日~1月24日開催。
「日本-にっぽん-since2001」
町田市フォトサロン 1月9日~2月7日開催。
会場では同名の写真集(蒼穹舎、A4変形、写真105点、112ページ、上製本、税込み4400円)も発売する。蒼穹社とGRAF Publishersのホームページからも購入できる。
http://www.sokyusha.com/index.html
https://graf-publishers.com/