たとえば、長崎県の五島列島にある六島(むしま)や黒島(くろしま)、あるいは沖縄県の慶良間(けらま)諸島にある前島(まえしま)。いずれも小さな島であるものの、かつては200人を超す人口を抱えていた。しかし過疎や高齢化などによって、今ではいずれも住人がひとりだけの島になっている。人口ひとりの島の現状とは、いったいどのようなものなのか。どのような人が、どのような思いで暮らしているのか。
ついつい先入観では「寂しい島」ではないかと考えてしまう。いよいよ無人島になる足音が近づいていると。しかし、島は不思議だ。実際に訪ねてみると、そこには生き生きとした暮らしが息づいている。人口ひとりの島は、寂しい、心細いというのは、外部からの勝手な思い込みにすぎないと気づかされる。そもそも私のように都会で多くの人に囲まれている方が、自分を見失って、孤独や不安を感じやすいものなのだろう。
人口ひとりの島をはじめ、日本の離島は島ごとに個性が異なるワンダーランドだ。実際に島々を訪ねてみると「不思議なこと」にたくさん出会う。そうして日頃忘れかけていた好奇心や想像力が、むくむくと湧いてくる。
コロナ禍では、なかなか現地に赴くこともできないので、本の執筆の際には、各島の知人への電話取材も重ねた。電話越しでも、島の人の変わらぬ息遣いが伝わってくる。
「(コロナ禍で)来る人が少ないから、静かだよ。(日頃忙しかったから)船も出せるし、釣りが楽しいね」「昔の島に戻ったみたいさ。島を出る用事も減ったから、近所の子どもの相手もできるし」などと。何だか電話越しに「のどかな風」が流れ込み、「向こう側の世界」へと吸い込まれそうになる。
いずれはコロナ禍も終息する。でも、よくよく考えてみると、人口という意味では地球そのものが「密」になっている。それゆえに、今後おそらく行動様式や価値観は元通りにはならない。そう考えると、島旅は「次の時代にふさわしい旅」ともいえるのではないか。島旅は「群れないレッスン」にもなる。
そんな来るべき島旅に備えて、旅のストレッチをはじめたい。今は地図を眺めるもよし、島の本を読み漁るもよし。2021年は、今ふたたびの島旅へ。日常で失われた、幸せの原風景を探して。
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