あけましておめでとうございます。じつは毎年、お正月になると流れ星を見るチャンスがやってくるのをご存じでしょうか? それは三大流星群のひとつ、しぶんぎ座流星群。2021年は1月3日夜にピークを迎えます。流れ星に祈願して星空の初詣なんて素敵ですね! ところが…星図をいくら探しても、しぶんぎ座が見当たりません。これはいったいどうしたことでしょう。そもそも「しぶんぎ」って、何?
この記事の写真をすべて見るしぶんぎ座という星座は存在しない!?
流れ星は、ふだんでも15分に1個ぐらいは流れているそうです。…などと聞いても、たまたま見上げた夜空にスーッと星が流れることなんて、実際めったに起こらないですよね。とはいえ、1年のうちに何度か「流れ星がたくさんあらわれる時期」があるのをご存じでしょうか? それは「流星群」と呼ばれ、見ごろとなる時間帯まであらかじめ知ることができるのです。漠然と夜空を見上げるよりずっと、流れ星に逢える確率が上がるというわけですね!
「しぶんぎ座流星群」は、1年の始まりを飾る流星群です。8月の「ペルセウス座流星群」、12月の「ふたご座流星群」とともに、三大流星群に数えられています。
しぶんぎ座流星群は、ちょっとミステリアス。活動が活発な期間が短く、年によって出現数にかなりムラがあるので、事前にどのくらい流れるか予想するのは難しいのだそうです。それだけに、「新年の運だめし」としても楽しめそうですね。
流星群の母天体は彗星。通り道に撒き散らしたチリが、軌道を回ってきた地球とぶつかり、大気の摩擦で光るのが流れ星です。けれど、しぶんぎ座流星群の母天体はわかっていないそうです。
流星群は夜空のある1点を中心に流れます。その中心(放射点)に近い星座によって名付けられています。ペルセウス座流星群はペルセウス座、ふたご座流星群はふたご座、しぶんぎ座流星群は…な、なんと。星座図をいくら探しても、しぶんぎ座なんて見当たりません。それもそのはず、しぶんぎ座は現存しない星座だというのです!
じつは放射点のあるあたりにはもともと「しぶんぎ座」があったのですが、全天の星が正式に88の星座として制定された際、「しぶんぎ座」は惜しくも不採用に。「りゅう座」と「うしかい座」の一部となってしまいました。
そこで流星群は放射点が近い「りゅう座」の名で呼ばれたりもしましたが、10月初旬にあらわれる別の「りゅう座流星群」と混じってややこしいこともあり、幻の星座名が正式名称になったようです。ないものによって位置が識別されているとは、なんだか不思議ですね。
そもそも「しぶんぎ」って、何?
ところで「しぶんぎ」って、いったい何なのでしょうか?
漢字で書くと「四分儀」。現在の星座にもある「ろくぶんぎ」「はちぶんぎ」の仲間で、扇形の円周部に角度の目盛りがついている道具です。天体の地平線からの高度などを測定するのに使われていました。
中世末から近世のはじめごろの絵には、扇形の機械を使って星をのぞいている天文学者がよく描かれています。円周4分の1の扇形なので「四分儀」または「象限儀」。大型で目盛りが壁面の一部についているものは「壁面四分儀」といい、しぶんぎ座も もともとは「壁面しぶんぎ座」と呼ばれていたそうです。
1731年にはハドレーが、円周の8分の1(45度)の扇形をもつ「八分儀」を作り、のちに改良されて6分の1(60度)の「六分儀」に。近代の六分儀は、大航海時代の船乗りたちにとって不可欠の道具でした。彼らは太陽・月・惑星・恒星などの、水平線からの高度を計測し、その角度と正確な時計が示す時刻とから、船の位置を正確に測定することができるようになったのです。今世紀に入って飛行機が発達すると、洋上飛行の場合にはやはり六分儀による天測で自機の位置を把握していました。
現在航海用に用いられている六分儀は、扇形の円周につけた目盛りに、平面鏡と小望遠鏡を取り付けてあり、片手で取り扱えるくらいの小型の機械となっています。電気に頼らず、GPS衛星のような人間が制御するものにも依存していないことから、六分儀は航行装置の重要なバックアップとしての役割を担っているそうです。
「しぶんぎ」は、人類が未知の世界へと漕ぎ出すために不可欠だった観測機械の原型。現在もなお名前が用いられているのは、その価値の証しなのかもしれませんね。
※『天文学辞典「六分儀」』(日本天文学会)はこちら
見ごろは1月3日深夜〜4日夜明け前!
今年のしぶんぎ座流星群の極大は、1月3日23時~4日0時頃と予想されています。ただしこの時間はまだ放射点が低いところにあるので、放射点が上ってくる真夜中頃からが観察のチャンス! 見ごろは夜明け前の2~4時間です。今年は、空の暗い場所で1時間あたり最大20個程度の流れ星が見られると予想されています。
流れ星は放射点を中心に空全体に現れ、いつどこで流れるかわからないため、なるべく広い範囲を見渡すのがコツです。街明かりなどが視界に入らない方向を中心に、リラックスして空を広く見渡すようにすると見やすくなるそうです。また、今年は明るい月が空にありますので、視界に月が入らない方向を見るようにするのがおすすめです。なかなか見られなくてもすぐあきらめないで、少なくとも15分くらいは待ってみてください。体をあずけるチェアやレジャーシートに寝転ぶと、首もラクで快適ですよ(マナーと安全面にはくれぐれもご注意を)。
また、寒いと落ち着いて空を見ていられないので、防寒は万全に! 携帯カイロや温かい飲み物の準備、また、ベランダや屋上などで見るなら、ときどき室内で温まることをおすすめします。
※『流星群の観察方法』(国立天文台)はこちら
冬の夜空には肉眼で楽しめる明るい星がいっぱいです。流れ星を待つ時間もいろいろな星を眺めて、ゆったり楽しみましょう。これから始まる1年が、どうかよい年になりますように!
<参考サイト・文献>
国立天文台
アストロアーツ
『星座の神話』原 恵(恒星社)
『今夜、流れ星を見るために』星空さんぽ編集部(誠文堂新光社)
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