※写真はイメージです (GettyImages)
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 原材料の高騰や円安で、企業の経営環境は悪くなっている。値上げを余儀なくされ、そのしわ寄せは当然、われわれ消費者におよぶ。しかし、値上げをしない姿勢を貫く会社もある。

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「そりゃあ、助かりますよ。何でも値上がりしていますからね。収入も同じ分だけ上がってくれればいいけれど、なかなかそうはいかないわよね」

 記録的な猛暑が続く最中の7月1日、横浜市内の住宅街にある「シャトレーゼ桜台店」を訪ねると、午前10時の開店を待つ60代女性はこう話した。市内で茶道教室を開いていて、お茶に添える菓子をこの店で調達するという。

 女性は言う。

「値段は手頃でおいしいし、毎日のように通っています。シャトレーゼは『値上げをしない』と言っているので、安心して買いに来られます」

 店の前にできた10人前後の列の傍らには、「値上げしないことへの挑戦」と書かれた看板がどん、と置かれている。総合菓子メーカーのシャトレーゼ(甲府市)は今春、店で扱う約400種類の全商品の価格を据え置く方針を打ち出した。同社広報室長の中島史郎さんは言う。

「小麦粉や油脂、砂糖、包装材といった原材料や資材の価格は前の年に比べて大体1割前後上昇しました。確かに厳しい状況ですが、状況が許す限りは、期間を区切らずに価格を据え置いていきたい。当社は誰にとっても手の届く値段でおいしいオヤツを提供することで、お客様の支持が得られてきたと考えています。原価の値上がり分をそのまま価格に上乗せするのではなく、まずは企業努力で、お客様の求めに応じていきたい」

 値上げを避けるため、同社は約1800人いる社員から、コスト削減策を募る社内提案制度を強化した。

「提案は以前から毎月募集していますが、今年からは、採用されれば効果などに応じて最大数万円の報酬を出すようにしました。製造ラインで自動化をする範囲を広げたり、包装紙に使うインクの量を減らしたりするなど、1カ月あたりで500件の提案が寄せられています。今はあらゆることをやらないと追いつかない」(中島さん)

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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