実は、これもコラボ企画が多い理由の一つ。というのも原作の絵だと作者が描くしかないが、漫画の連載をしている中でコラボ企画用に作画を描き下ろして監修して、という作業は非常に労力がかかる。それに比べ、アニメの絵は原作者以外のクリエイターが描けるため、より大規模に広範囲に展開することができるという利点がある。それを考えると、1つの作品をアニメ化することはキャンペーンやグッズ市場の拡大に大きく貢献しているといえる。

「実は、今挙げた企業はもともと多くのアニメコラボをしてきた企業なんです。今回は『鬼滅』とコラボしていませんが、カレーハウスCoCo壱番屋やファミリーレストラン『COCO’S』、日清食品など、異業種のいろんな企業がアニメとコラボしてイベントを展開し、幅広いアニメの展開を見せているんです」

 人気アニメと大企業がコラボレーションをするというビジネスモデルは何年も前から確立している。1996年に大ヒットした「エヴァンゲリオン」もアニメ放送が終わった後に映画化が繰り返され、いまだにGUや丸美屋、明星など企業とコラボした商品が人気だ。

 1つのアニメ作品の盛り上がりが、単にコミックスの売り上げ促進やアニメ業界の盛り上がりに留まる時代はすでに終わっている。今や日本経済に大きな影響を及ぼす巨大なマーケットを生み出す可能性があるということだ。また、局地的ではあるものの、地域の活性化にもアニメは貢献していると小新井氏は話す。

「埼玉県旧鷲宮町(現久喜市)が聖地として有名になった『らき☆すた』という作品があるのですが、その旧鷲宮町では『萌☆輪ぴっく』という運動会のようなイベントをファンと地元の方たちが共同開催しています。また町中でスマホをかざすとアニメキャラクターが出てきたりするAR(拡張現実)スタンプラリーを開催した自治体もあります。最近は、自分でお絵かきしたキャラクターが飛び出して動き出すというARが開発されてSNSで盛り上がっていました。これ以上何があるの?というくらい今のアニメの展開は幅広くなっています。

鬼滅の刃』に関しては、普段はアニメや漫画を見ない人々もハマっているのですが、その中には『鬼滅が好きなだけで別にアニメや漫画が好きなわけじゃない』という人もやはり一定数いらっしゃる。そういう人たちが鬼滅に飽きて、アニメや漫画を楽しむことをやめてしまうのはもったいないですね」

 小新井氏はせっかく多くのアニメに触れる機会があるのだから、別のアニメも見てみてほしいと話す。アニメの本数が昔以上に多くなり、ニッチな作品もアニメ化されるようになってきた。アニメ化をきっかけ「鬼滅の刃」クラスの伸びしろを見せる作品は今後も出てきそうだ。

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小新井涼氏
アニメウォッチャー
三木プロダクション
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻博士課程在籍
放送中アニメ毎週約100本全視聴中
https://www.mikipro.co.jp/talent/tarent_profile/koarairyo.html

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