田原総一朗・ジャーナリスト
田原総一朗・ジャーナリスト
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 ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本の政治、経済が深刻な危機に陥っている理由を説く。

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 日本赤軍の最高幹部であった重信房子氏が20年間の刑務所暮らしを経て5月に出所し、彼女たちが活動した1971、72年の出来事が大きな話題になっている。

 重信氏がレバノンに向けて出国し、日本赤軍を結成したのは71年。翌年以降、イスラエル・テルアビブの空港での銃乱射事件や数々の大使館占拠、ハイジャックといったテロ事件を引き起こした。

 過激派が日航機「よど号」をハイジャックして北朝鮮に渡ったのが70年で、国内に残された赤軍派は京浜安保共闘と合流して連合赤軍を結成し、71年から72年にかけて陰惨なリンチ殺人やあさま山荘事件で日本中を戦慄(せんりつ)させた。

 また、東アジア反日武装戦線を名乗る若者たちが、三菱重工本社などを次々に爆破し、多くの人命を奪ったのは74年から75年にかけてのことであった。

 この時代には陰惨で過激な事件が頻発していて、時代に大きな問題があったのではないか、と学者や評論家たちが論じているが、私は大きな誤りだと捉えている。

 左翼の反体制運動が行き詰まって過激化、暴力化したものの、政治や経済は非常に安定していたのである。佐藤栄作内閣は長期化し、沖縄の返還も決まった。党内ではポスト佐藤を狙って、田中角栄と福田赳夫の争いが激しくなっていたが、自民党政権は盤石であった。

 それに対して現在は、日本の政治、経済は深刻な危機に陥っている。この30年間、欧州の先進国や米国はそれなりに経済成長しているのに、日本はまったく成長していない。たとえば、日本人の平均賃金は30年前には韓国の2倍だったのに、現在では韓国に抜かれているのである。なぜ、こんな事態になってしまったのか。

 岸田首相は新しい資本主義による経済成長、所得倍増を表明していたのに、参院選を前に所得倍増という表現は消えてしまった。

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