大迫あゆみ(撮影/写真映像部・高野楓菜)
大迫あゆみ(撮影/写真映像部・高野楓菜)

妻には「でしゃばるな」

 大迫選手は、16年リオ五輪で5千、1万メートルに出場し、18年にはマラソンで2時間5分50秒の日本記録(当時)を樹立。あゆみさんは、合宿で不在中はワンオペをしながら、大会の時は1人で幼い娘2人を連れて飛行機で移動し、応援してきた。

 ただ、あゆみさんには、もやっとする瞬間がある。

 大迫選手のゴールを伝えるテレビ放映。子どもや両親が映ると好意的なのに、妻である自分が映り込んだ途端に「でしゃばるな」「あなたの手柄じゃない」と非難される。

「妻は三歩下がって支えるべきだとされている。なのに、夫の調子が悪いと急に前に出されて、妻のせいにされがちです」

東京五輪直前の2021年6月、娘たちと合宿地を訪ね、米国・グランドキャニオンへ(写真:松本昇大)
東京五輪直前の2021年6月、娘たちと合宿地を訪ね、米国・グランドキャニオンへ(写真:松本昇大)

 東京五輪の10日前、大迫選手が現役引退を表明したことについて、あゆみさんは、

「さみしさの一方で、この人まだやるんじゃないかな、と。家族の勘があった」

 と笑う。確信したのは、五輪後に家族で行った米カリフォルニアのディズニーランドでのこと。大迫選手はホテルで、シカゴマラソンの中継をじっと見ていた。その背中は、妙にさみしそうだったという。案の定、今年2月、現役復帰を表明した。

「大好きな走ることを、手放したくなかったんじゃないかな。走っている姿が一番かっこいい。これからも、普段通りのサポートをしようと思います」

(編集部・古田真梨子)

AERA 2022年7月11日号

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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