妻には「でしゃばるな」
大迫選手は、16年リオ五輪で5千、1万メートルに出場し、18年にはマラソンで2時間5分50秒の日本記録(当時)を樹立。あゆみさんは、合宿で不在中はワンオペをしながら、大会の時は1人で幼い娘2人を連れて飛行機で移動し、応援してきた。
ただ、あゆみさんには、もやっとする瞬間がある。
大迫選手のゴールを伝えるテレビ放映。子どもや両親が映ると好意的なのに、妻である自分が映り込んだ途端に「でしゃばるな」「あなたの手柄じゃない」と非難される。
「妻は三歩下がって支えるべきだとされている。なのに、夫の調子が悪いと急に前に出されて、妻のせいにされがちです」
東京五輪の10日前、大迫選手が現役引退を表明したことについて、あゆみさんは、
「さみしさの一方で、この人まだやるんじゃないかな、と。家族の勘があった」
と笑う。確信したのは、五輪後に家族で行った米カリフォルニアのディズニーランドでのこと。大迫選手はホテルで、シカゴマラソンの中継をじっと見ていた。その背中は、妙にさみしそうだったという。案の定、今年2月、現役復帰を表明した。
「大好きな走ることを、手放したくなかったんじゃないかな。走っている姿が一番かっこいい。これからも、普段通りのサポートをしようと思います」
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2022年7月11日号