世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。
■老舗ホテルにある心霊スポット
タイ・バンコクの観光といえば王宮だ。タイ王室の象徴的な建物である。隣接するエリアには日本人にも馴染みのあるカオサン通りなどがある。そのため周辺地域は常に多くの観光客でにぎわっている。
そんな商業的にも“一等地”ともいえる場所にあるのに、知名度がいま一つなホテルがある。ここではそのホテルを「R」と呼ぶことにしよう。20年以上前からバンコクで取材している筆者はさすがにその存在を認知しているが、宿泊したり、ホテルに入ったことはない。
聞くところによると、そのホテルにあるトイレが心霊スポットとして知られているという。「亜細亜熱帯怪談」(晶文社)の著者で、友人でもある高田胤臣氏とは、いつしかタイに行くたびに心霊スポットを巡るようになっていたこともあり、二人で現場に行くことになった。
入り口に広がるエントランスは、“いかにも”という感じの古さを感じさせる。その奥にあるというお目当てのトイレはすぐに見つかった。一見すると、ごく普通のトイレである。
ここでどんな怪現象が起きるというのか。今回の取材に同行していたカメラマン・明石直哉氏によると、以前この場所に来たときに「個室からトイレットペーパーを引く『カラカラ』という音が延々と響いていた」らしい。
個室は少なく、人の出入りも決して多くない場所だ。この怪現象の原因はなんなのか。考えていると、高田さんの口から新情報が飛び出した。
「実はこの場所、学生運動で犠牲者が出たときに死体置き場になったらしいですよ。あくまで噂で、きちんと調べたわけじゃないので、本当かどうかはわかりませんけど…」
1973年の「血の日曜日事件」か、76年に起きた「血の水曜日事件」のことだろうか。その点については、はっきりしていない。
確かな手掛かりがつかめないまま、ホテルを後にした。しかしこの怪現象、ずっとトイレットペーパーを引っ張り続けていたのが仮に人間だったとしても、それはそれで奇妙だと思ったりするのは私だけだろうか。(文/丸山ゴンザレス)