日本に近く、親日的であることでも知られる台湾だが、その歴史や文化について詳しく知る人は少ない。オランダ、清朝、日本の統治を経て、戦後は大陸での内戦に敗れて逃げ込んできた国民党に支配されることになる台湾。先住民も含め、この島の持つ文化的・民族的背景は多彩だ。本書は、そこに深く分け入る足がかりを与えてくれる。
教科書的な知識はさておき、著者は独自の切り口から重層的にこの島を素描してみせる。台湾に深く関わった教師・学者等の日本人や、彼らと師弟関係を通じて交流を結んだ台湾人何人かをキーパーソンとして、その足跡を追う中に、台湾が辿ってきた複雑な道筋を巧みに織り込んでいる。
過去と現在が自然と二重写しになる秀逸な観光案内ともなっている本書を手に、ぜひ当地を訪れたい。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2020年4月3日号