《きみはきみわたしはわたし頷きの仕草こんなに似てはいるけど》
1980年生まれの著者の、5年ぶりとなる第2歌集。
これまで短歌史において、短歌の主体は「著者=私」とされるのが一般的だった。しかし、本書のあとがきによれば、収められている短歌の主体は、「気分」と、その気分の背景にある「時間と光景」だという。であれば、それは特定の「私」に限定されない。
だから読者は、短歌に詠まれた「気分」をそれぞれ自分のなかに発見し、共感する。けれども、背景にある「時間と光景」は、実は一人ひとり異なっている。きみはきみ、わたしはわたし。その「時間と光景のささやかな差異」に、耳をすませながら読み進めたい。
《たやすみ、は自分のためのおやすみで「たやすく眠れますように」の意》
(後藤明日香)
※週刊朝日 2020年2月21日号