「昔はレコードを買ったら、車で聴く用にテープに録ってました。貸しレコード屋に行ってはテープに録って。とにかく録音する作業が楽しかった」
時代は変わり、音楽は配信サービスが主流に。無制限に曲を選べるのは、確かに便利だ。
「それはそれで良さもありますが、いまは時間が決まっていて終わりがあるほうが、逆にしっくりきてます」
ひたすら曲が流れ続けるのではなく、「終わり」や「区切り」があることに惹かれる、とANIさんは言う。「もうすぐ終わる」という、少し切ない感覚。
「収録分数が決まってるとかテープは面倒なところもあります。でも、自分の好きな曲だけ入れるみたいなエディットは作業も楽しい」
歌詞の中にしかないと思われたその「サマージャム」というミックステープは、当時、実際にANIさんがDAT(デジタル・オーディオ・テープ)でつくっていた。それを6年前にカセットにしてライブ会場限定で販売すると、たちまち話題に。そのテープのラベルイラストも、ANIさんが自分で描いた。
「誰かに渡すために自分でテキトーに描いたり編集する作業が好きなんです」
不便でも、ついつい自分でつくりたくなる楽しさ。そんな魅力が、カセットに詰まっている。
(編集部・福井しほ)
※AERA 2020年2月10日号