スチャダラパー、ANIさん。持っているテープの向かって左が、現在ではプレミアがつく「サマージャム'95」のテープ(撮影/編集部・井上和典)
スチャダラパー、ANIさん。持っているテープの向かって左が、現在ではプレミアがつく「サマージャム'95」のテープ(撮影/編集部・井上和典)

「昔はレコードを買ったら、車で聴く用にテープに録ってました。貸しレコード屋に行ってはテープに録って。とにかく録音する作業が楽しかった」

 時代は変わり、音楽は配信サービスが主流に。無制限に曲を選べるのは、確かに便利だ。

「それはそれで良さもありますが、いまは時間が決まっていて終わりがあるほうが、逆にしっくりきてます」

 ひたすら曲が流れ続けるのではなく、「終わり」や「区切り」があることに惹かれる、とANIさんは言う。「もうすぐ終わる」という、少し切ない感覚。

「収録分数が決まってるとかテープは面倒なところもあります。でも、自分の好きな曲だけ入れるみたいなエディットは作業も楽しい」

 歌詞の中にしかないと思われたその「サマージャム」というミックステープは、当時、実際にANIさんがDAT(デジタル・オーディオ・テープ)でつくっていた。それを6年前にカセットにしてライブ会場限定で販売すると、たちまち話題に。そのテープのラベルイラストも、ANIさんが自分で描いた。

「誰かに渡すために自分でテキトーに描いたり編集する作業が好きなんです」

 不便でも、ついつい自分でつくりたくなる楽しさ。そんな魅力が、カセットに詰まっている。

「ティンバーランド」や「Honda」などのブランドとコラボしてつくったカセットもファンの所有欲をくすぐる(撮影/編集部・井上和典)
「ティンバーランド」や「Honda」などのブランドとコラボしてつくったカセットもファンの所有欲をくすぐる(撮影/編集部・井上和典)

(編集部・福井しほ)

※AERA 2020年2月10日号

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