週刊朝日ムック『歴史道Vol.8』では、家紋と名字を大特集。「名字と家紋の起源」「天皇家の家紋」「関ケ原合戦屏風に見る家紋」など、様々な切り口で家紋と名字に関して考察している。ここでは「家紋と名字の基礎知識Q&A」から、種類や数、意匠(デザイン)に関するトピックスを紹介する。
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Q 家紋の数・種類はどれくらいあるの?
A 5つの基本的な種類や十大紋から派生し、江戸時代には250種を数えた
■現在の家紋の数は2万5000以上!
家紋は、家ごとに定めて用いてきた紋章のこと。名字を同じくする親類・一族に共通する例も多いので、家紋の数は名字に比べると随分と少ない。政府などの公的な調査がないため、研究家や研究団体の調査などを参照すると、その数は2万5000以上となる。
家紋の種類は、(1)牡丹や藤などの花、葵や木瓜(もっこう)などの葉・実を図案化した植物紋、(2)鶴や蝶などの動物紋、(3)日や月、星などの自然紋、(4)車や井桁(いげた)などの建物、乗物紋、(5)釘貫(くぎぬき)や轡(くつわ)などの器物紋、そして、(6)巴(ともえ)や引両(ひきりょう)などの文様・図案紋に分けることができる。もっとも多様で、数の多いのが植物紋である。
たとえば、全国的に用いられている家紋を「五大紋」あるいは「十大紋」と呼ぶことがある。五大紋は、通説では藤・桐・鷹の羽・木瓜・片喰(かたばみ)とされるが、平成二十年刊の『家紋の事典』(東京堂出版)に掲載の全国の占有率を見ると、片喰・木瓜・鷹の羽・柏・藤の順となっており、桐の代わりに柏が入っている。
また、十大紋は、通説では右の五大紋に、柏・橘・蔦・茗荷(みょうが)・沢瀉(おもだか)が加わるが、前掲事典の全国の占有率では右の五大紋に続いて、桐・蔦・梅・橘・目結(めゆい)とある。通説の茗荷は12位となり、沢潟はベスト15位に入っていない。
全国の占有率は日本家紋研究会が約250万件のデータをもとに算出したものとのことで、家紋の種類の(1)~(5)の分類に当てはめてみると、ベスト15位の占有率は、(1)植物紋が57%、(2)動物紋が7%、(3)自然紋が3%(月星紋)、(5)(6)文様・器物紋が7%(目結紋・巴紋)となる。