ファミレスにファストフード、牛丼屋に立ち食いそば......日本には数多くの飲食チェーンがありますが、皆さんの中にはチェーン店というものに対してネガティブなイメージを抱いている人も少なくないかもしれません。
「チェーン店なんておいしくない」
「安くて便利でどこにでもあるから仕方なく使うだけ」
「世間の勝ち組はこんなところには来ないだろう」
などなど......。けれど、その思い込みがどれほどもったいないかは、本書を読めばわかることと思います。『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』は、かれこれ20年以上も飲食業界に身を置き、数々の飲食店を立ち上げてきたという稲田俊輔さんが、日本の飲食チェーンの裏側や徹底的に楽しむ方法について明かす一冊。著者によると、「飲食チェーンは宝の山」だというのです。
本書にはガスト、デニーズ、バーミヤン、マクドナルド、吉野家、餃子の王将などさまざまな飲食チェーンが登場しますが、中でもいちばんページが割かれているのが「サイゼリヤ」。そもそも本書は、著者がブログに投稿したサイゼリヤに関する記事が反響を呼んだことがきっかけで出版されたといいます。飲食のプロの心をも動かす秘密がサイゼリヤにはあり、世の中の多くの人たちもまたサイゼリヤに大きな関心を持っているといえるかもしれません。
サイゼリヤの魅力をひとことでいうと、筆者は「おいしすぎないおいしさ」だといいます。たとえばサイゼリヤのグランドメニューのパスタのページには、次のようなことが書かれてあるそう。
「具やソースが主張しすぎないシンプルな味付け。ちょうどいいボリューム感。他の料理と組合せたり、みんなで取り分けたり。気分でお選びいただけます」。
つまり、ひと口食べて「おいしい!」となるようなインパクトはお店側も目指していないことが明確に宣言されているわけです。
しかし一方で、無料で用意されているオリーブオイルと粉チーズを見てみると......。オリーブオイルについてはイタリア・ナポリの老舗メーカーと提携して徹底した品質管理の下に直輸入されており、クオリティは確か。そして粉チーズのグランモラビアは熟成感のある硬質チーズならではの深い旨味とフレッシュな風味があり、よくある工業生産的なチーズとはまったく別物なのだそう。これらをかけ放題というのは、間違いなく私たちの自由度や満足感を底上げしてくれます。
さらに、チェーン店であるのに本場思考という挑戦に挑んでいるのもサイゼリヤの特徴だとか。プロシュートやサラミ、サルシッチャといったイタリアの本場の味を高品質低価格で提供したり、濃厚なバッファローモッツァレラや日本では先鋭的な店に使われることが多いペコリーノチーズなどの貴重な品をさらりと取り入れたり。「本格志向の硬派な一面と圧倒的な親しみやすさが混然一体となり、ワン・アンド・オンリーな魅力を紡ぎ出している」というのが筆者のサイゼリヤ評です。
このように、普通であればなかなか知りえない飲食チェーンの本当のスゴさに気づかせてくれる本書。ほかにもカレーマニアがデニーズで注文するべきメニューや、マクドナルドで狙うべき時間帯、吉野家の牛丼を最もおいしく味わう方法など気になる話題が満載です。そして読むとお店に行きたくなること請け合い。皆さんの飲食チェーンを見る目がこれまでとはガラリと変わるかもしれない、そんな一冊といえるでしょう。
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