国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
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■夜通し賑わう「十日ゑびす大祭」
新しい年を迎え、国内外から京都へ初詣に来る方で賑わう時期。仕事始めを迎え、さらに活気づくのが、祇園・宮川町に隣接する「京都ゑびす神社」の「十日ゑびす大祭」です。京都では「十日ゑびす」、または「えべっさん」と呼ばれ大変親しまれています。「ゑびす神」は漁を好み、物々交換でお米や穀物などと替える道を拓かれたことから「商売繁盛」の守り神とされています。左に鯛を抱え、右に釣り竿を持ち、福々としたお顔が何とも穏やかで、幸せな気持ちにさせてくださいますね。
「十日ゑびす大祭」には、1年間守ってくださったお笹を手に、たくさんの参拝者で賑わいます。神社前の大和大路通りには露店がずらり。お詣りあとに甘酒でほっこりし、甘いものをおみやげに買って帰るのが私の定番です。新しいお笹を抱えて、千鳥足で歩く参拝者の姿もまた微笑ましい光景です。今回は、商売繁盛の守り神「京都ゑびす神社」を訪ね、「吉兆笹」や新年にぴったりな演技の良い小物と共に京の活気溢れる新年の様子をご紹介します。
■京都の「ゑびす社」から全国に広がった「吉兆笹」
初ゑびすの時「商売繁盛で笹もってこい、お笹に吉兆付けましょか、つけた吉兆福の神」と、威勢の良いかけ声が届いてきます。この「吉兆笹」は、今から約400年前に京都の「ゑびす社」の18代神主であった中川数馬義幸氏の発案によるもの。従来の御札に替わり、庶民が親しみを持てる形を考えていた所、ゑびす神像が持つ釣竿をヒントに竹の葉である笹を「ゑびす神」の象徴としたのが始まりです。笹は、松竹梅の竹の葉で、真っ直ぐに伸び葉が落ちないことから家運隆盛、商売繁盛の象徴となり全国に広がり定着していったそうです。私も毎年欠かさずに参拝へ訪れていますが、一番の楽しみは笹飾りを選ぶ時間です。
真っ赤な鯛、千両、蔵、宝船、ゑびすさんと大黒さんの2面のお顔など、15種類の縁起物がずらりと並ぶ中から、今年の願いを込めて選びます。毎年授与される干支の絵馬は、宮司さんの原画によるものだそうです。ちなみに、全種類付けることを「全付け」と言うそうです。私は毎年2つか3つ選び付けていただいていますが、いつか憧れの「全付け」を叶えてみたいものです。お笹に願い込めて、今年も頑張っていきたいですね。