ビジネスマンが起こした事件を中心とした裁判傍聴記だ。

 早朝のコンビニで、店にあるおにぎりをカゴにありったけ入れて、店を出ていこうとして捕まった43歳無職の男。逮捕時の所持金はわずか147円。三つの大学を卒業した元公務員はなぜヤケクソの犯行に及んだのか。

 仕事一筋だった40代の営業マンは電車内で女子高生に性器を露出して逮捕される。裁判で彼が断片的に語った内容を総合すると「生きている実感が欲しかった」となる。人はいつ転落するかわからないと思わせるエピソードが並ぶ。

 19本の傍聴記とは別に、弁護士や裁判長、検察の巧みな話術や駆け引きも分析。ビジネスで使えそうなスキルに落とし込んでいる。人の運命が大きく変わる、裁判という場のテクニックだけに思わず唸らされる。(栗下直也)

週刊朝日  2019年12月27日号