レオ(川瀬さん提供)
レオ(川瀬さん提供)

 愛のレオ(写真、雄)が18歳で旅立ってから半年以上たつのに、犬を見ても愛猫に似ていると思ってしまう。私のペットロスは、想像以上に重症なのかもしれない。

 レオは亡くなる3カ月ほど前から目が不自由になり、壁やドアに頭をぶつけては右往左往していることがあった。

 だが、何よりも誇らしいことに、レオの律義さからなのか、粗相は全くしなかった。

 わが家にはモエという雌猫もいるから、女房はてっきり2匹が共同でトイレを使っていると思っていたらしい。ところが、レオが亡くなってからはトイレが全く汚れない。モエはもっぱら庭で用を足し、トイレはレオだけが使っていたらしいのである。

 気持ちが休まるのか、晩年のレオは昼間は2階にある私のベッドで寝ていた。老猫のレオが階下のトイレに行くのは、階段の上り下り、特に下りが厳しい。思うに、トイレのたびにレオは悲壮な決意をしたのに違いない。

 愛するレオの旅立ちは突然にやって来た。

 寝ているはずのレオが、なぜか目を開けている。「レオ! レオ!」と呼んでみても反応がなく、腕枕のままで動かない。

 その後、レオの顔をウェットティッシュで拭ってやると、口から何かがポロッと落ちた。それは紛れもなくレオの歯だった。

 レオにはレオなりの思いがあり、旅立ちにあたってせめてもと自分の歯を残す気になったのに違いない。

 人間で言えば90歳近くですからねと慰めてくれる人もいるが、それだけで納得するのは難しい。

 レオが残してくれたその形見の品を、私はお守り袋に入れ、そっと胸のポケットに収めて大切にしている。

 レオとの2人だけの会話は、まだまだ終わりそうにない。

(川瀬充朗さん 東京都/77歳/無職)

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