いじめや虐待、無理心中など、子供が犠牲になる事件が起きると、胸が塞がる。子供を幸せにできないのは、ぼくたち大人の責任だ。
山崎聡一郎の『こども六法』は、子供が自分を守る道具である。すべての子供にひとり1冊、いや、子供のいない家庭も含めて全戸に配布すべき本だと思う。
六法とは、憲法・刑法・民法・商法・刑事訴訟法・民事訴訟法を指すが、この本では商法の代わりに少年法といじめ防止対策推進法が載っている。あのわかりにくい法律の条文を、小学校高学年の児童でも読めるように易しく書き直し、ルビもついている。ぼくには六法全書よりこちらのほうが向いている。
たとえば「暴行」について定めた刑法208条には<ケガをさせなくても暴行になるよ>との見出し。本文は<人に乱暴な行いをしたけれども、相手にケガをさせなかった場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金か拘留、科料とします>。隣のページには206条「現場助勢」、207条「同時傷害の特例」、209条「過失傷害」など。
どのページも見出しが簡潔でいい。刑法218条「保護責任者遺棄等」には<子どもは生きるための世話をしてもらう権利がある>、民法818条「親権者」には<親は子どもの成長に責任があるよ>と書かれている。
民法834条「親権喪失の審判」のページには<助けてくれる大人は必ずいる!>との見出し。しかし、裁判で行政がいじめについて開き直ったり(川口市)、教員同士でいじめをしたり(神戸市)と、すべての大人が頼りになるわけでない現実がある。
※週刊朝日 2019年10月25日号