「私たちは鏡に自分の姿を映して今の自分を確かめています。自分はどう生きようとしているのか。屈服したり諦めたりするのか、希望を捨てずに闘いを続けるのか。毎日試されている感じです」
そう話すメグは24歳。非暴力の活動に徹している。ただ、前出のアンバーら「勇武派」との共通点もある。それは、普通選挙制の導入を求めた5年前の「雨傘運動」には参加しなかったことだ。そして、今年6月の2度にわたる大規模デモに参加した段階でも普通選挙制については強い関心を持っていなかった。
「6月以降、運動に加わる中で気づきました。結局、普通選挙を実現させて、北京政権の言いなりにならない行政長官や立法会議員を自分たちが選び生み出さないと、林鄭が辞めたとしても同じことの繰り返し。香港の自治を確保して自由と民主主義を守るためには、欧米の市民が手にしているような普通選挙が不可欠なんです」
今、彼女らが掲げるスローガンは「五大訴求、缺一不可!(五つの要求、一つたりとも譲らない)」。
1.逃亡犯条例改変の完全撤回
2.市民の抗議活動を暴動とみなす見解の撤回
3.デモ参加者の逮捕・起訴の中止
4.警察の過度な暴力的制圧の責任を追及し独立調査委員会による調査を行う
5.普通選挙の実施
この手のスローガンは、世界史的には一握りの指導部や一人のリーダーが決めたことに、みんなが賛同したり従ったりするのが常だが、香港は違う。市民は携帯電話用の通信アプリ「テレグラム」などを使って意見交換を重ね、最大公約数的に決まったのがこの5項目なのだ。
当面はこの要求実現のための活動を続けるとして、最終的に香港がどうなればいいと考えているのか、相当数の香港市民に聞いてみた。その答えは主として次の二つ。
・中華人民共和国の特別行政区という存在のままでいいから、普通選挙制の導入を含む自由と民主主義が確立された「一国二制度」の香港を保持したい。
・30年前、市民が決起してソ連の衛星国だった東ドイツやチェコが民主化され、ソ連の共和国にされていたバルト3国が離脱・独立した。難しいけどそうした道を求めたい。