なるほどと思う。ただし、私はこの二つとは異なる可能性もあると考えている。それは、中国共産党による独裁体制の終焉だ。かつて超大国だったソ連の共産党による国家支配がロシア革命から74年で終わりを迎えたが、私は、そのあっけない体制瓦解を現場で目の当たりにしている。中国共産党による建国から70年。もし10年以内に共産党の一党独裁体制が終わるとすれば、そのきっかけは間違いなく香港市民の決起ということになるだろう。
威(おど)しても逮捕しても収まらない市民の抗議行動。業を煮やした林鄭長官は10月4日、緊急状況規則条例によって「マスク装着禁止令」(覆面禁止法)を発令。集会やデモ行進など抗議行動に参加する際、マスクなどで顔を隠すことを禁じると発表した(翌5日から施行)。こんなことをしても賢い香港市民は「水」のように対抗するだろう。抗議の動きはこの先も決して収まることはない。
(文/ジャーナリスト・今井一)
※AERA 2019年10月14日号より抜粋