生命が誕生してから38億年の間に、地球上に現れた生物種の99%はすでに絶滅しているといわれる。本書は、その「絶滅」という事象から生物史を読み解いたもの。

 天変地異、人類による環境破壊、外来種の脅威など、実にさまざまな原因で、多くの種が死に絶え、あるいは絶滅の危機に瀕している。北米大陸に50億羽いたにもかかわらず、乱獲で20世紀の初頭には絶滅してしまったリョコウバトなど、そうした例は枚挙に暇がない。

 著者が強調するのは、絶滅にもさまざまな位相があるということ。絶滅したとされるネアンデルタール人だが、実は過去の交雑を通じて現生人類にもその遺伝子の一部が引き継がれている。系統としては、彼らもまだ死に絶えてはいないのだ。

 スケールの大きい思考を促される一冊だ。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年8月30日号