岸田文雄首相
岸田文雄首相

■宏池会と清和会、二つの政党に?

──岸田首相は2027年度時点で防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針です。どう評価しますか。

 やむを得ないと思います。防衛費のGDP比1%枠を決めたのは1976年の三木武夫内閣で、その後、1%枠を撤廃する総務会決定があった。当時、総務会長だった宮沢氏のそばに私もいましたが、喜んで決めたわけではなく「なし崩しにならなければいいな」と言っていた。それから三十数年間、1%台を守ってきたのは立派です。ただ、あれから安全保障環境は激変した。状況により対応を変えるのは当然で、反撃能力の保有にも慎重ながら賛成です。

 そのためにも、戦前の国策の誤りを確認し、歴史認識を一層明確にする必要があります。また、軍事行動の前に国会の事前承認を得るなどシビリアンコントロールの仕組みを整備することが絶対条件です。防衛費の財源は無駄な補助金など冗費を厳しく切っていくことで捻出しなければいけない。増税の話は、行政改革をやってからです。

──麻生派、岸田派、谷垣グループなどが合併して、100人規模の「大宏池会」をつくる話は根強くあります。

 伝統的な宏池会の理念を軸にしてまとまるならいいと思います。できれば、宏池会系と清和会系が二つの保守党になるのが望むところでしょう。

──今後の政権運営、どう見ていますか。

 いずれにせよ、内閣改造はしないと。年明けか、通常国会で予算が成立してからか。来春の統一地方選までに身支度を整える必要がある。5月の広島サミット以外にも旧統一教会問題などで実績をあげて、もう少し輝かないといけない。公文書改ざん問題で自殺した財務省職員・赤木俊夫さんの妻、雅子さんは今も真相解明を求めている。かつての自民党ならこの問題の放置は許さなかったでしょう。世論の援護で現状の政府・自民党に立ち向かってほしいものです。岸田首相には、自民党から失われつつある宮沢イズムを継承してもらいたいです。

(聞き手/本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2022年12月23日号