宮沢喜一元首相
宮沢喜一元首相

 もう一つがっかりしたのは、安倍元首相の国葬開催です。人に相談すればいいものを、これが一番いいと思い込んだら、独りで突っ走るところが危うい。菅義偉前首相時代に問題になった、学術会議の会員候補6人を任命しない方針を維持したことも問題です。宮沢氏が生きていたら、強くモノを言っていたと思う。言論の自由は、その時点で気に食わない意見があっても、そこから将来の豊かな構想が生まれてくるというのが健全な保守の考え方。それを拒絶する流れを許容してしまった点で、疑念はあります。

──宮沢政権の時には周囲に秀征さんや加藤紘一、河野洋平両官房長官のような人材がいた。

 私は宮沢氏に大事なことを電話で「どう思う?」と聞かれて、苦言を呈して、ガチャンと電話を切られたことが2、3回ある。当時、政界を牛耳っていた経世会の金丸信副総裁にきついことを言いたくない宮沢さんに、「こう言わなくてはいけない」と進言したものです。私は1、2年生で、経済企画庁の政務次官でしたが、宮沢さんからどんどん意見を求めてきて、数回に一度は受け入れてくれた。そういう人が何人か周りにいればと思いますが、岸田首相にはいないようです。官僚などの意見も大事ですが、恵まれて育った連中ばかりを周りに置いてはダメです。岸田首相は猜疑心がなく人の悪意に鈍感で、いじわるされてもそう思わないタイプ。だから人の悪意に敏感な、菅前首相のような人物も周囲にいたほうがいいと思いますね。

──支持率の低空飛行を脱する道は。

 底堅い3割の支持率のうち、2割は岸田首相の人柄に対する信頼でしょう。そこに上積みするためには、政策を転換するしかない。支持率急低下の一番の原因は、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題です。今の対応は生ぬるい。一般の人から見れば、なぜ解散命令が出ないのか、という疑念がある。被害対策弁護団と話して、彼らの意見を最大限尊重すべきですし、解散命令を出せないのならば、その理由を説明しないといけない。この問題は徹底的に取り組まないと、有権者は納得しません。

次のページ