経営者や従業員の礼節ある態度が企業業績に大きく関係していることを明らかにした一冊だ。著者は長年の調査結果をもとに、無礼な振る舞いが企業にいかに悪影響を及ぼしているかを提示している。

 人は常に評価の視線にさらされ続けている。興味深いのは、能力そのものより、礼儀正しさを人は重視する傾向にあるところ。気難しく能力が抜群の人より、礼節があり能力がまずまずの人が好まれるのは万国共通のようだ。問題提起にとどまらず、礼儀正しさを身につける処方箋や礼節チェックテストも載っているから多くの社会人に一読をおすすめしたい。

 もちろん、世の中には冷徹で傲慢な経営者も少なくないが、著者はこう指摘する。「無礼でなければもっと楽に成功できたかもしれない」。納得だ。(栗下直也)

週刊朝日  2019年8月2日号