岡田憲治『なぜリベラルは敗け続けるのか』。参院選直後でナンだけど、野党と野党支持者に覚醒をうながす警世の書である。

 民主主義を破壊する安倍政権。なのに野党が負けるのは<ひとえに野党側、リベラル側の人々が、実は「ちゃんと政治をやってこなかった」から>。<己が信じるただ一つの主張、ただ一つの思想を掲げて、「妥協なき戦い」を目指すのは、政治ではありません>。<私たちは「子ども」なのです>

 思い当たる点はたしかに多い。リベラル派は往々にして考える。<我々はつねに正義を訴え続けてきた>のに<なぜ世間の人たちは我々の正しさが分からないのか?>。で、もう一言。<本当に救いようもない>。こういう悪口、私はしょっちゅういってるわ。

 岡田さんにいわせれば、そこが問題。不本意な結果を人のせいにするのも、人を善玉と悪玉に分け「正義は必ず勝つ」と考えるのも子ども。安倍政権を退場させたいなら、もっとしたたかなオトナになれ。<私たちは「彼らを負けさせる可能性が一番近い集団」を作ることを促して、そこにまとめて投票しないといけないのです>

 たしかにそれはその通り。合理的に考えれば、野党候補を一本化し、四の五のいわずそこに投票するのが正解だ。でも<政治なんて、自分の「気持ち」など二の次なんだ>となると、はて、どうなのか。自分の気持ちに蓋をし、鼻をつまんで野党共闘に投票しろといわれて、選挙に行く気になれますか? 政治学者のこういう物言いがリベラルが負ける一因なんじゃないですかね。とかいうと、またドつかれそうだ。<「お前の『気持ち』なんて、どうでもいいんだよ」>

 はい、すんません。まあでもこれは、政治と思想を混同し、憲法や安保に固執し、ゼニカネの問題を忘れたオールド左翼を叱る本だな。その限りにおいては有効だけど、オールド化した現在の野党共闘にはやはり限界がある。山本太郎率いる「れいわ新選組」がゼニカネを語って共感(まさに気持ちだ)を集めた今回の参院選を岡田さんがどう見たか知りたい。

週刊朝日  2019年8月2日号