(c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会
 (c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会

伊藤:ラストのしょこたんのあのセリフ、きっとトラウマになると思いますよ。

──小学生時代から伊藤作品のファンだという中川さん。二人の交流は意外なことから始まったようで……。

中川:はじまりは事務所に伊藤先生がブルース・リーの絵を送ってくださったことでした。

伊藤:一ファンとして「しょこたん☆ぶろぐ」を読んでいたのですが、ブルース・リーがお好きだと知って「こんなに若い方が!」とうれしくて、勝手に送りつけちゃいました。

中川:「まさかあの伊藤潤二先生じゃないよね?」と開けてみたら「うわあ、この線と描き込みは本物だ!」って驚きました。

伊藤:しょこたんって楳図(かずお)先生の漫画から飛び出してきたような方だと思っていたんです。『洗礼』のさくらや『わたしは真悟』の真鈴のようだなと。私の『地獄星レミナ』のレミナも、いま考えるとしょこたんのイメージが入っていた気がします。

中川:本当ですか? うれしすぎます! 楳図先生の真鈴ちゃんに憧れてロングヘアやつけまつげをずっと真似していましたし、レミナもちょっとネガティブで暗いキャラクターなので共感していました。伊藤先生の描く女性はシルエットやスタイルがとても華奢で美しいので、いつも作品を見ながら「ダイエット頑張ろう!」ってモチベーションにもなるんです。

 (c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会
 (c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会

■やっぱり天才型

──絵が上手いことでも知られる中川さん。「映画秘宝」で長年連載を持っていたほか、漫画の連載経験もある。

中川:伊藤先生の作品は本当に一コマ一コマ、線の一本一本もすべてがアートですよね。いま作業はデジタルですか?

伊藤:はい。フルデジタルです。本当はアナログで描きたいのですが、時間がなくて。

中川:私もいまはデジタルですが、素人なのでどうしてもデジタル臭くなっちゃうんです。先生の絵はデジタルでもアナログ感がすごくあるというか、手のぬくもり感が残っている。どうしたらそうなるんですか?

伊藤:作業自体は紙でやっていることと同じなんです。ペンの設定を紙に書いたようなザラザラとした感じを出せるものにしたり、ツールで線を引くのではなく液晶タブレット上に定規をおいて、ペンで直線を引いてみたりとか。そうしないと昔のファンの方ががっかりしちゃうかな、と思うところもあって。

中川:そんなテクニックが!

伊藤:しょこたんはYouTubeでイラストを描いていますが、下描きせずに描いていらっしゃいますよね。すごいなあと思って見ています。

次のページ