いまから40年前の1979年、あなたは何をしていただろうか。50歳以上の方なら何か記憶があるはずだ。南信長『1979年の奇跡』は文字通りこの年にスポットを当てた本。なぜ79年が奇跡の年だったかといえば、なにしろ『機動戦士ガンダム』第1作の放送が開始され、大友克洋の初の単行本が刊行され、インベーダーゲームが大流行し、宮崎駿監督の劇場第1作『ルパン三世 カリオストロの城』が公開され、村上春樹がデビューし、YMOのセカンドアルバムが爆発的な人気を博した年だったのだから、と。
ちなみに私がこの中でリアルタイムで知っていたのはインベーダーゲームくらい。あとはすべて80年代カルチャーのイメージが強い。70年代最後の年だから、当然といえば当然だけど。
しかし紅白歌合戦の出場者となれば、話はまた別。この年の紅白の初出場者は、ゴダイゴ、サザンオールスターズ、さだまさし、大橋純子らで、アリス、松山千春、南こうせつらは出場を打診されるも辞退。山口百恵の最後の紅白出場もこの年だったが、<当時のヒット曲を、筆者はほぼ全部歌える>という著者ほどではなくとも、なるほど<いかにニューミュージック勢の台頭がめざましかったかがわかろうというものだ>。
これ以外にも、ソニーのウォークマンが発売されたとか『地球の歩き方』で海外旅行が変わったとか、楽しいトピックには事欠かないのだけれども、唯一残念なのは「で、結局1979年とは何だったのか」という総合的な分析がなされていないことである。
はたして40年で日本は変わったのか変わらなかったのか。
いささかシビアな79年の話題としては、スリーマイル島の原発事故があげられるが、市民の懸念をよそに日本の原発は安全だと当局は発表。<結果的には何も学ばなかったと言わざるを得ない>。
それでも<あの年に目にし耳にしたものが、のちの人生を決めたといっても過言ではない>といえる年があるのは幸せなことだろう。さて、あなたの特別な年は?
※週刊朝日 2019年6月21日号