アメリカの小さな町で家族経営の葬儀屋を営む男性の人気ブログを書籍化。著者キャレブ・ワイルドは、一時宣教師になろうとしたというだけあって、その死生観にもキリスト教の影響が色濃い。ただし、いやいや継いだ葬儀屋の仕事を通じて思索を深める果てに辿り着いた境地には普遍性があり、キリスト教に縁遠い日本人の胸にも響く。

 なにごとにつけ「死」を隠そうとする現代にあって、ワイルドは「死」と向き合うことを提唱する。そうすれば、死の中にも美しさがあり、それが生と対立するものではないことが見えてくる。

 葬儀をめぐる種々の人間模様を描きながら著者は、死がときに人と人の間の隔てを取り除くことを、そして死を悼むことに期限などないことを説く。多くの死を見てきた人ならではの説得力に唸らされる。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年3月15日号