楽天、ヤフー、そしてアマゾン。ネットショッピングはいまや生活に欠かせないツール。2016年の市場規模は約15兆円。百貨店の6・5兆円、スーパーの13兆円を上回っているそうだ。だろうな。あの便利さだもんね。

 だが、忘れてはいけない。われわれがワンクリックで注文した商品は毎日誰かが運んでいるのだ。むろんスーパーに並ぶ生鮮食品も。副題は「暮らしを支える労働のゆくえ」。首藤若菜『物流危機は終わらない』は物流を労働問題の観点からとらえ直した本である。
 ニュースになったヤマト運輸の過重労働問題などで知ってるつもりだったけど、予想以上でした。「再配達」「即日配達」「送料無料」が現場にどれほど負担を与えていたか。そしてトラックドライバーの労働がいかに過酷か。

 15年の調査によれば、長距離ドライバーの平均的な運転時間は1運行あたり10時間33分。4時間ごとに休憩が義務づけられているからといってルールを守るのは難しい。ネックは時間と運賃だ。トラック業界にとって延着は絶対NG。が、スピードも出せない。車にはスピードリミッター(速度抑制装置)が取り付けられ、GPSで運行状況を常に監視されているからだ。運賃が安い場合は高速道路も使えない。必然的にドライバーは休憩時間を削るしかない。

 ドライバーの仕事には運転以外の「サービス労働」も含まれる。荷物の積み卸しと待ち時間である。荷役作業には1時間から2時間を要するが、それに見合った料金は支払われず、しかも荷の積み卸しには順番待ちが必要なのだ。1運行あたりの平均待ち時間は1時間45分。3時間、ときには10時間に及ぶこともあり、これが長時間労働の一因となっている。

 かつては「きついが稼げる」仕事だったが、賃金が低下した現在ではそれも怪しい。<三年後や五年後に、今と同じように荷物が運べるとは到底思えない><このままだと、いずれトラックドライバーはいなくなりますよ>。ひえ~。便利さの裏に隠れた現実。マジで他人事ではないっす。

週刊朝日  2019年3月8日号