立春から3週間、身体の芯に応える厳しい寒さを経験いたしました。それでも春風が氷をとかし、とけた氷の間から魚が跳ね、雪や氷はとけて雨水となり、あたたかな空気に触れて立ちのぼるのは霞です。「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」季節になりました。気候変動が心配される21世紀ですが、二十四節気、七十二候は今もたしかに季節を語ってくれていると感じます。

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春の訪れは「霞」から!

霞が立つ頃は冷たく張り詰めていた空気もゆるんできたということですね。万葉集の歌にも霞の棚引くのをみて春がくる喜びをうたった歌があります。
「ひばり上る春へとさやになりぬれば都も見えずかすみたなびく」
春の到来は耳には鳥の啼き声が知らせますが、大地から湧き上がる霞は大気の動きを実感させます。現れる時間や状態によって呼び名も朝霞、夕霞、霞の海、八重霞、遠霞と表情は豊かに形容されています。ところが夜になると霞とはいわずに「朧(おぼろ)」となります。「朧月」が思い浮かびます。先日の19日から20日にかけての満月は今年最大ということで話題になりました。夜空のスーパームーンはくっきりと美しい姿でしたが、沈む頃は朝焼のなかに霞がかかり幻想的でした。しっとりとした霞は肌へもやさしく春を告げてくれているようです。

春をのんきに楽しむ鳥は? 「雲雀(ひばり)」です!

雲雀(ひばり)といえば「ピーチュクピーチュクルルル」という賑やかな囀りの声が聞こえてきます。盛んに囀るのは繁殖期の縄張りを宣言するためということだそうです。声の限りに囀るのも納得しますね。芭蕉はこんな句を残しています。
「永き日も囀りたらぬひばりかな」
雲雀は別名「楽天」といわれるのをご存じでしょうか? 天から与えられたものを受け入れて人生を楽観することが「楽天」と辞書にありましたが、決して雲雀はのんきではなさそうですね。鳴きながら空高く舞う雲雀の姿を「揚げ雲雀」といいますが、いかにも春を満喫しているかのように感じませんか。春の空は時間や天気の移り変わりによって、見せる表情は変化に富んでいますよ。

日本の真ん中にも「霞」がありました

それは「霞が関」です。言わずと知れた日本の政治の中心地、霞が関は超高層ビルが立ち並ぶ官庁街となって日本を支えています。ここに諸官庁を集めようと決めたのは明治政府です。ジョサイア・コンドル、ベックマンといったお雇い外国人とそれを受け継いだ人々により国会仮議事堂や、今でも美しい姿をみせる赤煉瓦の司法省などが建てられ整備されていきました。関東大震災、第二次世界大戦を経て霞が関は中央官庁としての機能充実化が進められ高層化されていきました。
でも、ほんの150年くらい前はこんな風に浮世絵に描かれていたんですよ! なんとものどやかな風情ではありませんか。江戸時代の霞が関は大名屋敷が建ち並んでたとのこと。こんな霞が関も歩いてみたかったですね。

歌川国芳「東都名所 霞が関」
歌川国芳「東都名所 霞が関」