二十四節気の「大寒」は1年で最も寒い頃とされています。今年は1月20日(日)でしたが、2月にかけて寒さが厳しい時期ですね。寒さが厳しくなればなるほど屋外と屋内の温度差が大きくなり、屋内でも暖房の効いた部屋と玄関や浴室など冷え切った場所とではかなりの温度差が生じます。
暖かい場所から寒い場所への移動など、急激な温度変化によって血圧が上下に大きく変動し、体に大きな負荷がかかる現象をヒートショックといいます。これにより不整脈や失神、重篤な場合は心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす可能性があります。最も寒いこの時期にヒートショックから身を守るには、屋内での温度変化をいかに小さくするか、つまり「温度のバリアフリー化」が大切です。そのポイントについてお話したいと思います。

1月下旬から2月中旬ごろは寒さの底

2010年以降の東京の最低気温を観測した日時を調べてみると、1月下旬から2月中旬にかけて多いことが分かります。
屋外の寒さはもちろんですが、屋内でも玄関や浴室など5℃を下回る場合があります。一般的な冷蔵庫の設定温度はおおむね5℃以下なので、屋内で冷蔵庫の中と同じくらい冷える所があるということになりますね。
冷え切った場所と暖房の効いた部屋との温度差は20℃前後に達することもあり、こうした温度の急な変化によってヒートショック現象の起こる恐れがあります。

脱衣所・浴室は冷えます!浴槽のお湯との温度差に注意

暖かいリビングを出ると、ヒヤッとした冷たい空気に驚くことがありますが、特に、脱衣所や浴室は家の中で最も冷える場所のひとつです。
この温度差を防ぐには、家の中で寒い場所を作らないことが重要です。そのために、脱衣所や浴室は入浴前に十分暖めておいて、暖かい部屋との温度差を小さくするようにしてください。また、冷えた浴室と浴槽のお湯との温度差にも注意したいので、お湯の温度は41℃以下に設定しましょう。
ある調査によると、冬に42℃以上の熱いお湯のお風呂を好む人の割合は全体の約4割と多いことが分かりました。年代別にみると70代が最も多く、年齢が高いほどお湯の温度が高い傾向にあるようです(*出典1)。
寒い浴室から熱いお湯の入った浴槽に入ると、その温度差が大きければ大きいほど血圧が乱高下し、体に大きな負担がかかります。特に、高齢者はこの血圧の乱高下が生じやすい傾向があり、より一層注意が必要です。

朝の寝室も冷えます!起床時も急激な温度変化に注意

冷え込みの強い朝は、暖かい布団から出るのがつらいですね。寝室や居間の空気はヒンヤリしていて、布団の中との温度差は意外と大きいのです。
そのため、冷えた寝室の場合、布団の中から出る際の温度差で心臓などに負担がかかることもあります。
この温度差を防ぐには、タイマー機能などで、布団を出る前に暖房を使って部屋を暖かくしてから起きるようにしてください。また、起きてすぐに布団から出るよりは、布団の中で手足の指の曲げ伸ばしなど、少し体を動かしてからゆっくりと出た方が良いでしょう。
夜中にトイレなどで布団を出る際は、布団やベッドから手が届くところに羽織れるものを用意しておくと安心ですね。
ヒートショック対策として大切なのは、部屋と部屋の温度差をできるだけ小さくして、家の中に寒い場所を作らない「温度のバリアフリー化」を心がけることです。寒さが厳しい時期だからこそ、家の中でも冷え込む場所があって、暖かい部屋との温度差が予想以上に大きくなります。
入浴時はもちろんですが、生活のいろいろな場面で生じる温度差を上手に調節して、ヒートショック対策を万全になさってください。
日本気象協会では、ヒートショックの知識や対策をより多くの人に知ってもらうため、ヒートショックの啓発プロジェクト「STOP!ヒートショック」をサポートしています。また、日本気象協会は東京ガスと共同開発した「ヒートショック予報」について、tenki.jpでも提供していますので、ぜひご活用ください。

◎出典元
(*1) リンナイ(株) 【熱と暮らし通信】「入浴習慣」と「入浴時のヒートショック」に関する意識調査 2016年10月26日プレスリリース