本書『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』の著者である高野秀行さんは、「子供の頃から胃腸が弱く、好き嫌いも多かった」と言います。大学探検部の遠征でアフリカのコンゴへ行ったときに食料がなくなり、サルやヘビなどの野生動物を食べることに。それをきっかけに「食の可動域」が広くなったのだとか。
辺境の地に行くと、日本の都市部では見ない料理や酒に出会います。最初は「ヤバそうだけど食べてみよう」と思ったものが、「ヤバそうだから食べてみよう」に変わっていったという高野さん。辺境旅で現地の人に溶け込むためには、同じ生活を送ることが重要。なにを出されても同じものを食べることで一気に溶け込むことができるそうです。
では実際に高野さんはどんなものを食べてきたのでしょうか。まず紹介したいのは前述した大学時代のコンゴへの旅。高野さんたちはここでゴリラの肉を食べることになります。同行していたコンゴ人動物学者が「ゴリラは国際保護動物だ。狩って食べてはいけない」と忠告したにも関わらず......。
というのも、次の日、この動物学者本人がゴリラに襲われ、慌てて銃で射殺してしまいます。村は食糧不足に陥っていたため、それがきっかけで村人によってすぐにゴリラは解体され、塩と唐辛子のみの味付けで煮込まれることに。「クジラの肉がもっと筋張って固くなった」ような、噛んでいると顎が痛くなるほど固い肉だったそうです。
もちろん、辺境メシは日本にも存在します。広島県三次市では郷土料理から発展した「ワニバーガー」が。ワニとは古語で「和邇」と書き、今でいうサメのこと。出雲地方では今でもサメのことを「ワニ」と呼び、「ワニバーガー」を頼むとサメの肉を挟んだハンバーガーが食べられます。
ワニを刺身で食べるとクジラに似ていると高野さんは感じたそうですが、加熱された「ワニバーガー」では一変。がっしりしたクジラとは違い熱に弱く、ほぐれやすい肉になるそう。刺身と「ワニバーガー」の両方が食べられるお店に行けばそのギャップを楽しむことができるでしょう。
他にもペルーでのヘビ料理など、高野さんが体験した様々な辺境メシが本書では楽しめます。ちなみに高野さんは、辺境メシによって胃腸が強くなったわけではないそうで、国内外でよく寝込んでいるのだとか......。それでも知らない食の世界への探求心のほうが強いと語っています。高野さんの興味は世界各地の伝統食品にあるそうなので、またそちらも本として出版されるかもしれないですね。
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