平成は政権が目まぐるしく交代し続けた時代だった。総理大臣の数は30年でじつに17人。最長はやがて丸6年を迎える第2次安倍晋三政権、次が5年5カ月続いた小泉純一郎政権。逆に宇野宗佑政権はわずか69日、羽田孜政権は64日の短命に終わった。

 芹川洋一『平成政権史』は、この30年を俯瞰して<それぞれの政権とは何だったのか。どんな特徴があり、何をやろうとしていたのか>を振り返った本である。著者は日経新聞の元政治部長。

 最後の自民党単独政権だった宮沢喜一政権は<遅れてきたケインジアン>による<「遅れてきた保守本流」政権>。細川護熙政権と羽田政権は<小沢がつくって小沢が壊した政権>にすぎず、村山富市政権は<55年体制と社会党に幕を引いた政権>、橋本龍太郎政権は改革に腕をふるうも<「改革NO」の声につぶされた政権>だった。身も蓋もない感じだが、まあそんなものか。小泉政権が<本当に自民党をぶっ壊した政権だった>のもその通りだろう。

 ただ、民主党政権には異様に冷たく、第2次安倍政権には妙に甘い。鳩山由紀夫は<戦後最低の首相><明治からの憲政史上でも間違いなくワーストスリーに入る首相>で、民主党政権最大の失敗は鳩山を首相にしたことだとまでいわれると、ちょっと擁護したくなるし、安倍政権は<失敗を糧に経済を重視、官邸主導を確立した政権>という評価には、安倍を「戦後最低の首相」と見る有権者もいることが考慮されていない。

 なんだけど、私が衝撃を受けたのは<30年たって政党の体制がもとにもどってしまった>という点だった。紆余曲折の末、現在の政党は自民、公明、立憲民主、国民民主、共産の5党が中心。仮に立憲民主を社会党、国民民主を民社党に置き換えれば、これは自民、社会、公明、民社、共産の5党で構成された55年体制と変わらない。<政治改革で制度をかえてみたものの、政権交代可能な政治体制にはならずに、もとにもどっただけ>。そ、そうかも。いったい何だったんだ、この30年!

週刊朝日  2018年12月21日号