人は「すごい」と「やばい」でできている! それが本書のコンセプト。本郷和人監修『東大教授がおしえるやばい日本史』は「すごい」ばかりが強調される歴史のスーパースターの「やばい」面にも光を当てた異色の日本史だ。

「すごい」「やばい」の前に、説明の仕方がむちゃくちゃ今風。なにしろ卑弥呼は<引きこもりのおばあちゃん>だし、聖徳太子は意識高い系で<隋がバラエティ番組の司会者なら日本は後輩のひな壇芸人のようなもの>だったにもかかわらず、<日本も隋に負けてないんで!>みたいな手紙を書いて隋の皇帝をキレさせた。

 平氏が関西代表のおぼっちゃま武士なら、源氏は関東代表のヤンキー武士。ヤンキー武家のプリンスはもちろん源頼朝だが、この人は「平治の乱」で父の義朝が殺されると、伊豆に流され<都会のプリンスから田舎のニートへと一気に転落>した。そんな<トラウマもちの頼朝>とはちがい、弟の義経は<単純明快な体育会系男子>だったが、義経が<ちびで出っ歯>だったのは有名な話。

 その後出てきた足利尊氏は<その場のノリで気が変わる人>。後醍醐天皇とつるんで鎌倉幕府を倒したものの、<後醍醐さんの天皇中心の政治のせいで、武士の立場がありませんよ。正直やってらんないっす!>という武士たちのグチに心を動かされ、今度は後醍醐を裏切って室町幕府を開いた。が、その室町幕府もしばらくたつとやる気をなくし、守護大名たちは口々にいいはじめた。<つーかいまの弱った幕府なら…><おれら従う必要なくね?>

 なんかもう歴史っつーより、不良同士の抗争だよな。こんな調子で織田信長は「うつけ」どころか<まるで腰にチェーンをじゃらじゃらつけたヤンキーのような、わかりやすい不良>だし、戦国最後のヒーロー真田幸村は関ケ原の戦いの後、流罪になって<ヒマをもてあますニート同然>。

 なるほどなあ。日本の歴史はヤンキーとニートがつくってきたんすね。つーか、でもそれ、東大で教えてんじゃないっすよね。

週刊朝日  2018年10月26日号